「共同購入型」「貢献型購入」が信頼社会を加速させる
さて、今回の座談会では「信頼」「共生」を軸に社会をアップデートさせることをテーマにしているので「信頼社会」に向けてどのような行動をとるべきか?も気になるところです。我々社会を構成する一人ひとりはどうしていけばいいのでしょうか?
「国、行政が何もやってくれない!」と不平不満を募らせるだけではなく、自分達が主体となって「どうあるべきか? どうなりたいか?」という主体的な「意識」を持つことも我々一人ひとりに必要な社会的役割であると石山アンジュ氏は続けます。
また、そのような「信頼社会」でのビジネスモデルはどのようなものがあるのか?と質問したところシェアリングエコノミーはもちろん、「共同購入型」が一つの解であると石山アンジュ氏は述べます。クラウドファンディングを例に出し、応援したいという意識を集めて購買に結びつけることが信頼社会のビジネスモデルとしては良い例と述べます。
登壇者の一人、IBM Future Design Lab.の髙荷力氏がコロナ以降の「生活者DX調査」実施した際に、購買行動の一つとして「高くても、国産品を選ぶ」「自分の地元に貢献したい」割合が増えたことを紹介していましたが、これからの信頼社会では「共同購入型」しかも「貢献型」というのが多く支持を得ていきそうです。
私もコロナ以降、浜松のみかんの木のオーナーになりました。特定の時期にみかんを狩りに行きます。面倒ではあるのですが、その分愛着もあり、浜松三ヶ日にも少しは貢献できているかな?という満足感も喜びを増幅させます。スーパーで買うみかん以上に美味しくも感じます。面倒くささ半分、愛情半分の恋愛思考的「共同購入型」、「貢献型」のサービスは信頼社会には必要になりそうです。
中央集権への挑戦、建築も地産地消へ
UDS代表の黒田哲二氏は「信頼」「共生」社会の到来を都市集中型からの移行と重ねながらとらえます。そのアプローチとして気になっているのは人間の生活圏に太古の昔より寄り添っている「川」を中心に考え直すという視点。川の流域に広がり営まれていた生活地域が、廃藩置県で川を境に分断されたことが、地域ごとの豊かな生活が失われた一つの原因ではないか、という考え方です。そして、川を中心とする生活圏のなかで、建築をはじめとした暮らしの様々な面に地域資源を生かしていくことにより、地域ごとの、豊かな「共生」社会が取り戻せるのでは、と考えていらっしゃいます。確かに地元の木材を建材として活用することで様々な「共生」が生まれそうです。黒田哲二氏のUDSに特徴的な住居・ホテルなどの「場」を企画から設計、運営まで手がけるスタイルにより地域内経済循環が活性化する共生社会が色鮮やかに生み出されそうです。
日本IBM田中茂氏は「信頼社会」を構築するためのヒントを町内会にもあるのではないか?と述べます。「地方にはまだ残っている町内会や婦人会のような共生の意識、つながりを社会全体で適用することが大事なのではないか?」と。また、田中茂氏が仕事として関わっているヤマト運輸の事例も紹介されました。いままでヤマト運輸の専用ドライバーが配送の川上から川下まで担っていたものが、人口減少や新たな価値観、働き方の変化により、全部を自社で抱え込むのではなくヤマト運輸のアセットをオープンにしつつギグワーカー(オンラインのフラットフォームを介して単発の仕事を請け負う労働者)にも気持ちよく働いてもらえる「共生」の仕組みも作り上げていると述べられました。