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 シェアハウスや民泊、カーシェアなど、ここ数年、シェアリング(共有)の文化が発達してきた。しかし、コロナ禍で風向きは変化。共有がさらに加速する領域もあれば、逆に“専有”へと回帰する領域もあり、二極化が起きている。たとえば働き方においては、副業をはじめ「人材の共有化」が進んだ一方、これまでシェア文化を牽引してきた住まいや生活に関わる事柄は、感染リスクを抑えるために専有を望む姿勢も見られる。共有・専有のバランスは、今後どう変化するのか。生活者の未来のライフスタイルを占う上で重要なテーマだろう。

 そこで話を聞いたのが、一般社団法人シェアリングエコノミー協会の常任理事を務め、自身も約100名の人とシェアハウスで共同生活する石山アンジュ氏。そして、まちづくりの視点でホテルをはじめとする各種施設の企画・設計・運営を一連で手がけるUDS 代表取締役社長の黒田哲二氏。

 この対談は、日本アイ・ビー・エム(以下、日本IBM)のコンサルタントと実施。さまざまな業界企業のDXプロジェクトをリードしてきた田中茂氏、生活者の消費行動の調査や分析を専門としてきた髙荷力氏が参加した。さらに、テクノロジーやUXを基点に企業の事業・業務変革を支援してきた藤森慶太氏も同席。スタートアップや企業などのプロジェクトを多数生み出してきたビジネスプロデューサー・西村真里子氏の進行のもと、専有と共有のバランス、そこから見える未来の暮らしを考えていく。

※本記事は、3月18日に行われたイベント「専有と共有のバランス〜分け合う、支え合う心の未来」〜西村真里子のオニワラ!『鬼と笑おう』〜未来をつくる座談会 powered by IBM Future Design Lab. #3」の本編と事後トークの内容をもとに再構成しています。

コロナ禍で急加速したのは「企業によるシェア」

西村真里子(以下、西村):IBM Future Design Lab.では、変化の激しい時代において、より良い社会を作るための発信をしていますよね。ここ数年、シェア文化が普及してきましたが、コロナ禍ではシェアの進む領域と、反対に専有に立ち返る領域があると思います。田中さんはどう感じていますか。

田中茂(以下、田中):コロナ禍では、他人との時間・空間のシェアが感染リスクになっています。そのため、今までシェアの代表格だった住まいや車のシェアは停滞している印象です。ただ、これは一時的なもので、シェア文化の広まりは時代の大きな流れ。コロナで完全にストップすることはないでしょう。

 一方で興味深いのは、企業におけるシェアが急加速している点です。人材やオフィス、ナレッジのシェアが起きており、ある運送会社は、これまでドライバーをすべて自社で抱えていましたが、ギグワーカー(オンラインのフラットフォームを介して単発の仕事を請け負う労働者) を活用し始めています。自社が全アセットを抱えるより、アセットを外部にシェアする流れが起きていますね。その中で企業は、いかに自分たちのアセットを気持ちよく相手に使ってもらえるか、シェアしやすい環境を作ろうとしています。それはDXの重要な要素にもなっています。