CSR活動とSDGsの関係性

 それでは、SDGsを意識した場合に、CSR活動にはどのような影響があるのだろうか。

 結論から言うとマイナスの影響はなく、プラスの影響が大きいと考える。企業のCSR活動において、「その活動の影響やインパクトは社外に向けたものなのか、それとも社内に向けたものなのか」という視点と、「その活動の狙いは、貢献的なものなのか、義務・防御的なものなのか」という視点から、大きく4つの方向性に区分できる。

 図中の「攻めのサステナビリティ」「守りのサステナビリティ」の詳細については、第3回のコラムを参照していただきたい。

防御的で社内に向けた右下の領域は、
・リスクマネジメント活動
・コンプライアンスの強化 などの活動が該当する。

防御的で社外に向けた左下の領域は、
・適切な法的義務の遂行 などがある。

 これら下の領域の中で、事業継続計画(BCP)などは社内外の中間に位置する活動と言える。これらは企業に求められる法的、倫理的な対応をしっかりと漏れなく実施し、不祥事などで継続性が脅かされることを予防するための、企業防衛的な「守りのサステナビリティ」活動と位置付けられるからである。

 一方で、貢献的で社内に向けた右上の領域は
・福利厚生の充実やES活動
・働き方改革の活動 などが位置付けられる。

貢献的で社外に向けた左上の領域には、
・寄付活動や芸術や学術の支援活動
・企業見学や就業体験の受け入れ
・地域の活動支援
・ボランティア支援などの慈善的活動 などが含まれる。
 そしてもちろん、社会貢献的な本業の事業活動が本来的な活動として位置付けられる。

 現実問題として、これまで貢献的な活動に対する企業の取り組みは、創業者の考え方、過去や現在の経営者の思いなどで企業ごとの自主性に任されてきていた部分が大きかった。何をどこまで行うべきなのか、各社悩みながら、要請や内部からの発案に基づき、手探りで実施してきていた部分が大きいのである。今後、SDGsを意識して貢献的な活動を検討することは、企業がその方向性を検討する際の大きな軸になるはずだ。