SDGsの活用でCSR活動が広がる
従来、CSR活動とは、経営者の発想や限られた周囲からの要請、社内でのアイデアの公募などを具体化した貢献的な活動だった。対して、SDGsで定義づけられた17のゴールや169のターゲットは、自社のリソースを使って、社会課題にもつながる活動を考えるきっかけにもなり、活動の位置づけを整理する視点ともなる。さらには、そこに自社の提供してきたサービスや製品の歴史や価値を位置づけることで、『自社らしさ』という視点を追加することもできる。
社内向けの活動や、社員による外部活動についても新たな発想が広がり、その活動が社会的課題の解決にもつながっていく。こうしたことの説明を強化していくことで、社員の士気を高める活動にもつながる。会社としての非財務的なきちんとした活動は、社外からの評価だけではなく、社員による会社の再評価、社員予備軍の学生などからの評価向上にもつながることを認識すべきである。
本業としての事業を社会貢献につなげられないか、というのは古くて新しい課題である。薬品や、医療機器、医療器具などの事業を持っている企業は本業の事業の拡大が社会貢献につながると位置づけやすいが、そのような業種は決して多くない。ボランタリーでも社会貢献できる活動は非常に有益ではあるが、本業と結び付き、収益を伴わないと長く続けにくいのが実態である。
古くはトヨタ自動車におけるハイブリッド車の開発・販売や、最近であればテスラによるEV車や、ユーグレナによる石油代替の燃料の開発・販売というように、社会貢献と実益を両立できる(可能性のある)事業の確立はこれからの企業経営にとって非常に重要な課題といえる。
その解決に向けてアウトサイド・イン型発想で新しい事業のタネを強制発想する手段として、SDGsを活用することは企業にとって重要だといえる。
コンサルタント 大谷羊平(おおたに ようへい)
取締役 経営コンサルティング事業本部 本部長
ビジネスプロセスデザインセンター センター長
シニア・コンサルタント
全日本能率連盟認定マスター・マネジメント・コンサルタント
早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1993年、新卒で日本能率協会コンサルティング(JMAC)に入社以来、25年に渡り、100社程度のコンサルティング支援。収益改革やBPR、情報システム構築、働き方改革やKPI管理、リスク管理など幅広い分野を支援している。