〔アプローチ2〕経営課題のブレークスルーでDX化を推進する

 2つ目のアプローチは各職場の現場改善だけでなく、工場全体の最適化を目指す領域「Ⅱ.最適化領域」である。

・マス・カスタマイゼーションの実現
・超高速PDCAの実現による圧倒的QCDEレベルの向上
・新製品導入LTの半減
・自動化自律化促進による効率化
・多拠点コントロールワンファクトリーの実現

など、これらの施策の選択は同一業界であっても、置かれているポジションや規模、扱う品種数などの違いで選択すべき姿は異なる。自社が目指すスマートファクトリーはどんな工場なのか、その答えは各社各様のはずである。

 また、最適化されたものづくりをデザインするためには、工場の中だけで考えていては答えを見つけることはできない。製造機能と関わるさまざまなプレーヤーに対して、どのようなバリューを提供できる工場にすべきかを考える必要である。

 デマンドチェーン、サービスチェーン、エンジニアリングチェーン、サプライチェーンといった工場を取り巻く4つのチェーンと工場の関係から、自社工場が解決すべき経営課題を明確にし、それらを解決するためのDXの仕掛けを考えることが必要である。これまでのアプローチでは解決できなかったことを、DXで突破できるかもしれない。

◆経営課題をブレークスルーする際に目指すべきこと

 DX化推進における経営課題は、実はDXの有無に関係なく企業として取り組むべき経営課題そのものであり、DXはこれらの課題を解決するためのツールでしかない。自社にとっての重点を選択し組み合わせることができれば、それが自社にとっての「最適化された工場の姿」である。一つ一つの経営課題を実現させるために、どのようなメカニズムでどのようなツールを組み合わせるかを、次の段階で調査選択すればよい。

 このアプローチにより、ツールの便利機能に惑わされず、自社が実現したいスマートファクトリーの姿をブレずに描くことができる。工場全体のスマート化については、イニシャルコスト・ランニングコストとも大規模になる。そうした面からも、経営レベルのインパクトを与える変革のシナリオを描き上げる必要がある。