間接発行型中央銀行デジタル通貨

 実際、中国人民銀行や欧州中央銀行、日本銀行を含め、CBDCについて検討を行っている中央銀行のほとんどは、上述のような考え方を踏まえ、「国民全員が中央銀行に口座を持つ」といった「直接発行型」ではなく、民間銀行などを経由して発行する「間接発行型」を想定しています。これにより、民間によるデータの活用やイノベーションを推進したいと考えているわけです。

「間接発行型」では、中央銀行は個人や企業に直接デジタル通貨を供給するのではなく、民間銀行などに対してデジタル通貨を発行します。そして、このデジタル通貨を個人や企業に配る役割は民間銀行などが担います。国際的な議論では、「間接発行型」の代わりに、しばしば「シンセティックCBDC」「ハイブリッドCBDC」などの用語も使われますが、基本的な構造は同じです。

 もちろん、現在でも中央銀行は民間銀行などに中央銀行預金(リザーブ)を供給し、民間銀行はこれを元に預金を供給しています。このような現在の仕組みと、間接発行型CBDCとはどう違うのかが、一つの論点となります。この点については、「預金は民間銀行の債務だが、間接発行型CBDCは中央銀行の債務である」という説明が行われています。