共有価値の創造の追求がユニークさを生む

 従来の経営戦略の発想法では、経営環境を分析する際に既存顧客のマーケティング分析や競合企業の動向調査、法制度改定、技術動向調査など、既存事業周辺を対象とすることが多いのではないだろうか。つまり、大きなパラダイムシフトや予期せぬ環境・社会の変化を、往々にして分析対象から外し、近視眼的な情報に基づく戦略立案に終始していないだろうか。

 このような分析に基づき、企業活動が進むと、同業種内での模倣競争に陥り、コモディティ化が加速する。新規性のある商品を開発しても、即時に競合に模倣され、価格競争に陥る。また、単年度目標を追うばかりに、長期成長シナリオが置き去りにされたまま、過去の延長線上の経営方針から脱却できない状況に終始してしまう。こうした事業環境下で閉塞感を感じている企業も多いのではないだろうか。

 このような社内起点の経営戦略の発想をインサイドアウト型発想と位置付けると、環境・社会課題から経営戦略を発想するアウトサイドイン型発想の重要性が浮き彫りになる。この非連続で長期的な経営戦略の発想が他社と異なる自社のユニークな競争力を生む源泉となる。

 このアウトサイドイン発想で重要な概念が「共有価値の創造(CSV)」である。これは、マイケル・ポーター氏が提唱した概念で、社会課題を経済活動の力で解決し、経済的価値も追求するものである。つまり、社会価値の創造と経済的利潤追求の両立を目指すものである。

 これら、攻めのサステナビリティを推進する上で、社会課題からビジネスチャンスを見いだす視点が、「持続可能な開発目標(SDGs)」の17のゴール視点である。これは2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された2030年までに持続可能でより良い世界を目指す国際目標である。17のゴール視点は169のターゲットに詳細化され、構成されており、これら視点を用いることで、攻めのサステナビリティを意図した事業機会の発想に活用できる。
(※詳細の活用検討については今後の本コラムで紹介予定)