【事例②】リソース視点を広げ、新サービスを展開する

 次にご紹介するのは、JAL Agriportのレストラン「DINING PORT 御料鶴」である。レストランは最もコロナの影響を受けた業界であろう。このレストランではJALグループというリソースを生かし、国際線機内食の提供を始めたという。ここからは筆者の解釈となるが、この試みにはさまざまな狙いが含まれていると考える。

 まず考えられるのは、コロナ後の再開における集客の目玉企画という位置付けである。メディアにも取り上げられ、話題作りになり、遠のいていた客足を呼び戻す一助になろう。リピーターのみならず、新規顧客を呼び込むきっかけにもなる。つまり、営業面への貢献が期待できる。

 次に、「御料鶴でフライト気分」というメニュー名があるように、CX(Customer EXperience=顧客体験価値)の創出である。通常、当然のことながら国際線に搭乗しない限りは、その機内食を体験することはできない。それを疑似体験することそのものの楽しさがある。さらに、JALに身近に触れて親しみを持つその体験の記憶が、JALでの国際線利用への入り口づくりになる可能性もある。これはファンづくり面への貢献が期待できる。

 さらに、このレストランでは客室乗務員の接客もあるという。これは前述のCXを高めるとともに、EX(Employee EXperience=従業員体験価値)も高めていると考えられる。コロナ禍において客室乗務員は乗務機会が激減した。これは、モチベーションや働きがいを奪ったと推測される。このレストランが一部とはいえ、それを補い、さらには経験の浅い客室乗務員のトレーニングの場になったことは想像に難くない。つまり、3つ目の貢献として客室乗務員への貢献が期待できるのだ。

 レストランにおける機内食の提供はこれらの貢献が期待できるし、製造量が減っていた機内食の出番をつくることなどへの貢献もあるだろう。ちょっとしたリソースの活用がさまざまな貢献を可能にするのである。

 リソースを考える視点として自社のみならずグループ企業といったことも考えられる。さらに広げれば、顧客やそのネットワークを活用することも可能なはずである。視野を広げ、知恵を絞りたい。