完全デジタル開催「CES2021」の画期性と残念な点

オンラインイベント成功の鍵は「バーチャル密」をどうつくるか

朝岡 崇史/2020.9.15

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 また、熱量の「交換」については来場者IDの仕組みづくりに工夫が必要だ。

 IFA 2020では下のスクリーンショットのような形でネットワーキングのルームを設定し、登録者を業種や職種でソートできるような試みがなされていた。しかしながらやはり「顔なし」は味気ないし、その人が出展社なのか、プレスなのか、投資家なのか、コンサルタントなのか、どこから何を目的に来場したのかという情報は最低でも欲しいところだ。

IFA 2020のネットワーキングのルーム。来場登録の際に顔写真の提出はなかったので、来場者のプロフィールも「顔なし」で実に味気ない(IFA 2020のオンライン展示サイトより)

 CESでは来場登録の際に顔写真、氏名、会社名、肩書き、業種の他にメールアドレス、会社住所と電話番号の提示を求められ、顔写真、氏名、会社名、国と都市、業種の情報がハガキ大の来場者バッジに反映される。CES 2021では来場者が希望すれば、今、基調講演を聴いているのは何人でどういう業種の人たちなのか、この展示ブースに来ているのは国別ではどういう順番なのかなど、来場者が即座に知ることができるというような形で気の利いたサービスに期待したい。

 デジタルの情報の海は体感的には冷たい。そこにヒトの存在を体感させること。ワークショップのようなカジュアルな感覚で、顔も見えるコミュニティ間で情報と熱量の「密」を創り出すこと。これこそが「バーチャル密」の本質であり、CES 2021が実現すべきオンラインイベントの「ありたい姿」であると信じている。

 それは間違ってもかつての「セカンドライフ」のように人工的なデジタル空間に視覚的なアバターを生み出すことではないのである。

 さらに言えば、民間レベル、特にこのコロナ禍で国境を越えてラスベガスに来場者を運ぶ事業機会を失ってしまった航空会社、視察ツアーを組んで収益をあげることができなくなってしまった旅行会社はCES 2021の完全オンライン化を奇貨として「バーチャル密」をマネタイズに繋げるようなビジネスアイデアの創出が必要だろう。

 これまでも業界スペシャリストやコンサルタントによる事前の講演会、現地でのガイドツアーなどに注力して来た旅行会社は多い。CES 2021では、来場者の体験の質を高めるために、ぜひ「在宅」で、オンラインでのガイドツアーやネットワーキングの支援を受けられるプレミアムなサービスを期待したい。

 いずれにせよ、「バーチャル密」はCES 2021でオンライン化の成否を握るキーワードになるだろう。