小規模スーパーならではの特性を活かす
店舗間のバラツキが大きく出るものの1つが仕入れ・買付です。山間部エリアになると市街地で売れる商品が全く売れない等、商圏ごとにお客様の好みも異なることもあり、個店毎の仕入れは「エリアニーズに合った品揃え」という観点からはメリットを感じます。
地元の小さい市場も地場のスーパーの応援者でもあります。近くの市場と良い関係を築けている各店舗の主任は有利な条件で仕入れていますし、その背景には市場があるいは仲卸が仕入れすぎたときにはできるだけ多く買取るなどいわば互助的な関係もうまく築いているのです。一方で、劣化している商品が届けば返品・交換を主張しなければなりません。
計数管理を進めていく中で、青果部門では買付についてはこういう関係性をバランスさせているスペシャリストが少ないことも残念ながら明らかになりました。そこで共通の特売品は課長が一括で仕入れて配分し、また品質に関しても窓口は課長に一本化しA社としての品質基準を担保するように運用を変えました。
いまだベストという状況ではありません。依然相場が安いときにドンと仕入れるタイプの主任は利益率が安定しませんし、定番の品揃えが安定しません。しかしA社では以前よりも良い状態を常に模索しながら改善を続けています。
本社の管理の中で不具合が出ているものは自覚を促し他店と足並みを揃える、しかしお店単位でこだってやるところは貫いてみる・任せてみる、という流れを自分たちが納得してつくっていくことがうまくいっているようです。しかしその線引きは曖昧であり、大手チェーンがこれをやればたちまち「統制」が効かなくなるのでしょう。これも10店舗程度の社員一人ひとりの顔と個性のわかるスーパーならではだからでもあります。
(第2回に続きます)
◎寺川 正浩(てらかわ・まさひろ)
日本能率協会コンサルティング ビジネスプロセスデザインセンター チーフ・コンサルタント
1997年 JMAC入社。専門はマーケティング・営業領域。戦略策定から、戦略を実現するための業務プロセスの設計、KPIを活用したマネジメントの仕組みづくりを経て、実施・定着化までの一貫したコンサルティングを行う。小売・サービス業、食品メーカー、アパレルメーカー、医薬品メーカーなど幅広い範囲を支援。著書に「トップのための経営講座 国内成熟市場で伸びる営業・マーケティング戦略」(商工中金経済研究所)、『実務入門 「仮説」の作り方・活かし方』『実務入門 営業計画の立て方・つくり方』(いずれも日本能率協会マネジメントセンター/共著)、「サービスプロセス改善事例集2010」(日経BP寄稿)、ほか多数。JMACサイトでもコラムを執筆。