店舗ごとの粗利率のばらつきからロス率の違いに着目すると、ロス率の中でも値引き率が高い店舗や廃棄率が高い店舗が浮き彫りになります。青果部門で値引き率が高い店舗のオペレーションを確認すると、1回毎の仕入れ量が多く購入サイクルが長い店舗が目立ちました。これでは鮮度が落ちます。さらに、廃棄率の高い店舗のオペレーションを確認すると、日々の鮮度チェックが充分ではないことに加えて、鮮度が落ち始めた野菜を処分品として売台ではなくバナナ箱に雑然と置いて販売していました。半額以下であれ誰も買わずにそのまま箱の中で廃棄になるのは当然です。

 これらに限らず、個店経営型では自らのオペレーションの不具合に各主任が気づいていないことも大きな問題なのです。巡回に十分な時間を確保できなくなった課長も徐々に問題仮説をもって効率よく巡回・指導するようになり店舗マネジメントのスタイルが変わりました。

 特定のカテゴリーの売上構成比が低く、支持率(レジ通過客数のうちそのカテゴリーを購入した割合)も低い売り場も指導の対象となります。ところが「特定のカテゴリーは確かにそうだが全体の業績は良い」、こういう売場が時々存在するのです。例えばA社のケースでは、通常刺身カテゴリーの売上構成比は魚全体の35~40%であるのに対して常に50%を超えており、その分鮮魚・塩干等他のカテゴリーの売上構成比が極端に低いバランスの悪い店舗があります。毎月の重点アイテムのPI値(レジ通過客千人当たりの購買指数)も低い等、課題もある店舗です。しかし売場全体の売上や支持率は全店舗の中でも上位に位置し、粗利率も目安としている3割を常に超えています。管理者としては悩ましいケースですが、今のところこの店舗への指導は行っていません。

「全社統一のマネジメント体制のもと、個店経営型の良いところは大事にしている」と言える程ではないですが、こだわって取り組んでいるところはそれぞれに任せています。やや曖昧さを残す管理スタイルではありますが他店舗からの非難はありません。小規模ゆえ他店の事情を皆が知っているというのは大きいでしょう。

 個店経営型で一つひとつの店舗が充分なパフォーマンスを発揮できれば確実に小規模スーパーも生き残っていくのでしょうが(実際にそのようなスーパーは存在するようですが)、そこまでの道のりはずいぶん遠いからこそ、A社のようにチェーンストア型の一定のマネジメント機能が必要になるのです。