日本企業においては、このような偶発的な経緯のもとで、差別性の高い事業が生み出されていることが多い。これを、オープンイノベーションに対しても応用することで、左脳的要素と右脳的要素を共存させることが可能ではないだろうか。

オープンイノベーションのあるべき姿

 ここで、JVCケンウッドの事例を振り返ろう。

 彼らは、新規事業を考える上で、既存事業とのシナジーという観点は重要にしているが、最初から“全社横断“のような大きなテーマはあえて狙っていない。かといって、既存事業の不足を補うようなオープンイノベーションだと、小粒になりがちであるとの課題意識もあったため、飛び地領域で、ある程度偶発性にまかせてテーマを推進した。ここで、スタートアップ的な動き方ができていたことは重要な成功要因である。

 一方で、飛び地・偶発的といえど、それぞれのテーマは「ブランドイメージ」によって既存事業との連関が緩やかに担保されているために、既存事業とのシナジーを考えやすい状況が生み出されている。

 彼らにとって、点を繋ぐ作業はここからであるが、結果的に生まれてきた「テレマティクス事業」と彼らの既存領域を結んだ交点には、多くの「差別性の高い」事業機会が(外部の目から見ても)想定される。それらを、「テレマティクス事業」という点がない中で、発想することは容易ではない。点が打たれたからこその、事業機会なのである。

 このような機会創出のアプローチは、今後のオープンイノベーションのあるべき姿として、重要なベンチマークになり得ると考える。

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 なお、JVCケンウッド、ADL、Crewwの本稿当事者がパネラーとして参加するイベントを、10月4日(金)の夜に実施する。本記事の内容に興味を持たれた方は、ぜひ参加されたい。(イベントページ:https://peatix.com/event/1327440/view