早い時期より、対等な関係の元に成り立つ企業間オープンイノベーションの創出に取り組んできた富士フイルムホールディングス(以下、富士フイルム)の「OpenInnovation Hub」。小島健嗣館長(以下、小島氏)に、日本のオープンイノベーションについて、さらに開設5年で見えてきたその理想型について、話を聞いた。
企業間オープンイノベーションのベストな相互関係
「SDGs」のようなグローバルなものから、日本国内の地方創生まで。世の中にはまだまだ取り組むべき社会課題が多くある。その課題を解決するためには、1つの力だけで取り組むのではなく、さまざまなパートナーと組み、お互いの強みを持ち寄って課題に立ち向かうことが重要となってくる。そんな思いを胸に、企業との“共創”を積極的に行っているのが、富士フイルムだ。
富士フイルムは、2014年にビジネスパートナーと共に新たな価値を共創する「Open Innovation Hub」を開設した。同施設は、一般見学は受け付けず、富士フイルム社員の紹介による完全予約制で、徹底的にBtoBのオープンイノベーションに取り組んできた。この5年で変化を感じていると、館長である小島氏は言う。
「オープンイノベーションの施設はすごく増えていますよね。その中で我々『Open Innovation Hub』は5年前に先駆者として始めました。ここができたことにより出会ったことのない方々とビジネスができるようになり、それが非常に加速していると感じています」
オープン当初のターゲットは技術について詳しいCTO(最高技術責任者)が多かったというが、現在は技術系以外のより広い経営層、さらに研究開発の担当者、新規ビジネスを考えている担当者など、ずいぶん広がったという。
「すでにお付き合いのあるお客様と、さらにこの場に興味を持ってくれた新規の企業様の事業開発者の方も含め、“ビジネスパートナー”とお呼びし、来場していただいています。お客様との“対等な関係”を形成した上で、『写真フィルムなどを通じて80年以上にわたって培ってきた我々の技術アセットを利用して、お客様の課題にどう役立てることができるのか?』などを議論し、新たな価値を共創する場として来ていただくわけです」
富士フイルムとしては、既存のビジネス領域を広げるという意味でも、今まで関係性のなかった業種・業界の方と、対等に相互の課題解決に取り組めることに大きなメリットがあるようだ。