右脳的(探索的)な視点での新規事業創出
右脳的な観点でDXビジネス事業部の取り組みはどうだろうか。
(1)Whyとしては、テレマティクスなどの新事業以外にも、アクセラレータープログラムを通してオタク的感性を大事にした事業機会を探索している様は、実にスタートアップ的だ。
スタートアップは少数のコアファンのニーズを満たすニッチから始まる。そこには自分自身だったり、自分の身内だったりが抱える不満や感情が原体験として存在し、それを解消するPurposeに共感する人々がファンになる。関わる全ての人のエネルギー密度を引き出すための人間中心的な試行錯誤はスタートアップの日常だが、当社ではオタク的感性での感動創出がPurpose化している。
(2)Whatでは、DXビジネス事業部がユーザーの体験価値を最優先で考え、その実現は内製に拘らない点が指摘できる。
イノベーションのジレンマは、顧客の需要を自社の都合より優先させることがレガシー企業にとって合理的でないために生じる。実利を取るために手っ取り早く必要な外部と組む行為は、既存事業部にとっては合理的でなくとも、ゼロイチの市場創出を担うDXビジネス事業部にとっては合理的であり、また経営が権限移譲を通じてDXビジネス事業部に期待するものなのだ。やってから考える、軌道修正しながら進むそのスタンスは、身軽なスタートアップを彷彿とさせる。
最後の(3)Howは、当社の学習主義的なアプローチが該当する。
フェイルファーストの思想やリーンスタートアップの手法については、本稿の読者に説明する必要はないだろう。スタートアップは積極的に自己開示しながら社外と壁打ちし、学習し、必要に応じて速やかに軌道修正やピボットを行う。
当社のテレマティクス事業は社外との繋がりから偶発的に発展し、また雪だるま式に膨らんだり削り落ちたりしながら成長の軌跡を辿り、全くもって計画的に進んだものではない。社外との共創から得る気づきが、こだわるべきブランドや答えるべき顧客の期待など、自己客観視や自己強化サイクルに繋がっている。フットワーク軽く協力者やユーザーが集まる様は、事業成長に向けたどんな分析よりもパワフルだ。