地方創生の中心にあるオープンイノベーションとは

 IT技術の急速な進化やグローバルな競争の激化を背景に、自前主義からオープンイノベーションによる共創へ、イノベーションはその在り方を変えてきた。同時にオープンイノベーションで解決するのは、なにも製品や事業開発における課題だけではなくなってきている。都市への人口集中や地方の過疎化といった日本全体の問題から、道路渋滞や伝統産業の後継者不足といった地域の社会課題にいたるまで、その範囲は多岐にわたる。今回は、地域の社会課題の解決を目指す地方のオープンイノベーションの取り組みや、その可能性について見ていこう。

研究開発から社会課題まで。オープンイノベーションで解決を目指すもの

 従来のイノベーションは、企業が自社内で行う研究開発の位置付けであった。しかし昨今のIT技術の急速な進化やライフスタイルの多様化によって、研究開発から製品化までのリードタイムの短縮や付加価値の高い商品の開発が求められるようになった。そのため、自社のリソースやアイデアだけではスピード・クオリティ共にイノベーションを創出し続けることが難しくなってきた。さらに終身雇用の限界がうたわれ人材の流動性が高くなってきている今、外部資源に目を向けざるを得なくなってきている。

 こうした背景から外部資源を活用する取り組みが模索され、オープンイノベーションが始まった。ひとくちにオープンイノベーションといっても、外部資源を自社内に取り込む「インバウンド型」や、自社の技術を外部へライセンスアウトすることで新たな開発・製品化につなげる「アウトバウンド型」、そしてインバウンド型とアウトバウンド型を融合させ、社内外で共同開発する「連携型」など、その取り組み方は多様化している。

 このように様々な形で取り組まれるオープンイノベーションは、そのスピード感やクオリティが会社の業績に与える影響が大きくなってきたために、今や企業の経営戦略の一つとして重要なポジションに位置付けられるようになっている。会社として現在なにを課題と考え、今後その課題に対してどのような相手と組むのか、その取り組みや共創相手に、企業が目指す方向性や姿勢があらわれる。

 そんななか、オープンイノベーションの次のステージとして意識されたのが、社会課題の解決だ。単に売上高や株価などの数値的な企業の成長だけを目標とした場合、製品化・サービス化をゴールとして、オープンイノベーションの役割は終わってしまう。しかし今はオープンイノベーションによって研究開発された製品・サービスを展開することで、どのような社会を実現したいのか、企業が描く「将来あるべき社会の姿」に向けて志を同じくしたもの同士がオープンイノベーションに取り組むことに共創の意義がある。

 そして今、オープンイノベーションによって社会課題の解決を図ろうとする動きは、地方創生という観点からも盛んに行われている。地域の社会課題に対し、官民・産学連携で取り組む地域が出てきているのだ。

 例として、2019年3月に行われた第1回日本オープンイノベーション大賞で受賞したもののうち、地方の社会課題の解決を図る取り組みを紹介する。