地方創生×オープンイノベーションのチカラ

オープンイノベーションで社会課題は解決できるか

山際 貴子/2019.9.3

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社会課題の解決はエコシステムの形成がカギを握る

 またオープンイノベーションで社会課題を解決し、持続可能な社会を実現していくために、既存企業やベンチャー企業、研究機関、地方自治体、公的機関、政府が密に連携したエコシステムの構築が注目されている。経済産業省が発表した「オープンイノベーション白書 第二版」においても、国内外のオープンイノベーション事例に共通する成功要因としてエコシステムの構築をあげている。

 そしてそのエコシステムの成功に必要なのは、他地域と差別化を図りプレイヤーを集めるための「テーマ」と、そのテーマに基づくビジネスの循環、エコシステムの構築と継続が可能な「拠点」、さらにエコシステムを支える制度整備や組織間の連携などの環境づくりを主導する問題意識と熱意にあふれた「駆動役(ドライバー)」の3つだ。

オープンイノベーションエコシステム成立要因の概念図 (参照:「オープンイノベーション白書 第二版」268p
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 地域の社会問題の解決に向けたオープンイノベーションに関しては、地域での生活向上や地域活性化を図る観点から、行政が「ドライバー」役を担うことが多い。行政の「拠点」に多くの研究機関・企業が集積することにより、地域のイメージアップを図ることができるという効果もある。

●山形県鶴岡市のエコシステム
 バブル崩壊後、誘致企業の海外移転や中心市街地の空虚化が進んだ山形県鶴岡市では、慶應義塾大学先端生命科学研究所(IAB)の誘致をきっかけに「知識駆動型のまちづくり」を掲げエコシステムの形成に乗り出した。IABの研究成果をもとに、国、自治体、企業の支援を受けてさまざまなバイオベンチャーを立ち上げており、そのうちの1社が上場するという成果もあげている。

 鶴岡市のエコシステムでは、競合が少ないニッチな「テーマ」を選んだことと、研究者や有識者などの外部資源をうまく活用したこと、さらにその技術で特許を取得し大学発ベンチャーとして商業化、支援組織などの「拠点」を整備したこと。加えて、鶴岡市が「ドライバー」として適切な関与をしたことが成功の大きな要因と考えられている。

 こうしたエコシステムを育てていくためには継続的な取り組みが不可欠だ。研究は必ずしもイノベーションにつながるとは限らない。その不確実性を行政が理解した上で、「ドライバー」役としてエコシステムを継続して支援していくことが大切だ。鶴岡市では、10年以上にわたり用途を指定せずに年に3.5億円の支援を行っている。このように行政としてオープンイノベーションに関与するにあたり、ブレない一貫性を持って、必要な時に必要なことを支援する姿勢がエコシステムの構築成功の秘訣と言えるだろう。