地方創生×オープンイノベーションのチカラ

オープンイノベーションで社会課題は解決できるか

山際 貴子/2019.9.3

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ユーザー参加型オープンイノベーション「リビングラボ」の取り組み

 これまで青森県や群馬県、山形県など、いずれも行政がドライバーとしてオープンイノベーションを支援している事例を紹介してきたが、これまで研究対象だったユーザー(住民)がドライバーとしてオープンイノベーションに取り組む「リビングラボ」も登場している。

 リビングラボは米国発祥であるものの、北欧では2000年ごろから活発に取り組まれているユーザー参加型の共創活動を指す。

 ユーザーには、ユーザー視点のアイディアによる開発パートナーとしての役割と、開発した製品・サービスを実際に使って気づいたことをフィードバックするモニターとしての2つの役割がある。

 今、日本でもこうした役割を担うユーザー参加型のリビングラボの取り組みが始まっている。

●資生堂「グローバルイノベーションセンター」
 資生堂が横浜市のみなとみらいにオープンした「グローバルイノベーションセンター(GIC)」はリビングラボの典型だ。1階と2階を地域のユーザーに開放し、さまざまなコンテンツを展開し、研究員と住民の積極的な交流を奨励している。4階には研究機関や原料メーカーが入居できる「コラボレーションラボ」を用意し、共同研究・開発を活性化させている。

 資生堂が約400億円を投じてGICを設立したのは、ユーザーの行動を理解することで研究員の視野を広げイノベーションにつなげる狙いがある。機密情報を扱う研究拠点をあえて開かれた場にすることで、研究員と顧客・取引先との接点を増やした。

●横浜市と東京急行電鉄とNTTドコモによる「データ循環型のリビングラボ」
「次世代郊外まちづくり」のモデル地区のたまプラーザ駅北側地区では、横浜市、東京急行電鉄、NTTドコモが中心となって、「データ循環型のリビングラボ」の実証実験を行なっている。住民が「まち歩きサービス」と「地域チャットボット」のICTサービスを用いて、主体的に地域の情報を収集、共有、活用する取り組みだ。情報収集から活用までを住民が主体となって行うことで、地域の社会課題をより効果的に解決するとともにコミュニティも活性化することが期待されている。

「データ循環型のリビングラボ」(参照:NTTドコモ レスリリースより)
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オープンイノベーションで地方に眠る課題解決を

 地方には行政サービスで解決しきれていなかったり、そもそも可視化されていない社会課題が多く眠っている。国や都市の大きな社会課題の中には、そうした地方の小さな社会課題が山積みになってできているものもある。

 社会が急速に変化していることで、地域に求められることも高度化・複雑化しているが、技術が進歩する今だからこそ、まずは身近な社会課題を発見し、企業や研究機関、住民などが自分ごととして解決に向けて考えることが大切だ。その上で、リビングラボのように必要に応じてそれぞれの知見や経験を共有し、迅速にオープンイノベーションに取り組むことでそうした課題を解決していくことができる。そのスピードとクオリティをエコシステムの構築によって高めていくことが、ひいては都市や日本全体の社会課題の早期解決につながるだろう。

 人口減少に高齢化など、課題先進国の日本だからこそ、オープンイノベーションによって花ひらくチャンスがある。地方はオープンイノベーションのチャンスの宝庫なのだ。