●健康未来イノベーションプロジェクト(内閣総理大臣賞)
日本一平均寿命が短い青森県において、「予防医療」「健康増進」を目標に、2005年から蓄積してきた住民健診で得られた住民の健康ビッグデータをオープン化した。これを受けて弘前大学や花王など50以上の企業・研究機関が連携して分析し、疾患に対して革新的な予防法の開発に取り組んでいる。このプロジェクトにより、約242億円の経済効果、約1,812人の雇用創出、約527億円の医療費抑制が見込まれる。2017年には男性の平均寿命の伸び率で全国3位を記録し、着実な成果を示した。
●遺伝子組み換えカイコによる新産業創出プラットフォームの構築(選考委員会特別賞)
養蚕農家の高齢化と減少により蚕糸業の高度な飼育技術の継承が危ぶまれていることを背景に、農研機構と群馬県蚕糸技術センターが世界初の「昆虫工場」を設立し、遺伝子組み換えカイコのハイレベルな研究を実施。特許とともにノウハウを企業側に提供して、医薬品や高機能シルクを開発するプラットフォームを構築した。高機能シルクについては、生産農家から製品化まで一貫したグループで開発しており、実用化によって蚕糸農家が補助金なしで自立した生産を行えるようなることを目指している。また医薬品についてはヒト骨粗しょう症検査薬などの製品化により、2030年には100億円の市場規模が見込まれており、医薬品の輸入超過や医療費削減に貢献すると見られている。
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2つの事例はいずれもオープンイノベーションで社会課題を解決し、持続可能な社会を目指すものだ。2015年の国連サミットで「SDGs(持続可能な開発目標)」が採択されたが、企業や自治体、研究機関においても一過性の課題解決ではなく、持続可能な社会の形成に貢献する事業が強く意識されるようになっている。これは日本政府が目指すSociety5.0の実現に向けた取り組みにも通じるところがある。