デジタルテクノロジーで顧客接点に照準――新たな戦場の出現

 世界の経営者層はテクノロジーのインパクトを強く感じている。2018年度版「グローバル経営層スタディ」によると、「自社にもっとも影響を与える外部要因」として、「テクノロジー」は「市場の変化」「人材・スキル」と並ぶトップ3。これは2012年から顕著になってきた傾向だという。

「経営層全般に言えることですが、テクノロジーに対する意識は、ここ5年を潮目に大きく変化してきたように感じています。この設問は2004年から継続していますが、2012年にテクノロジーがトップになり、その後も流れは続いています。以前であれば、テクノロジーの話はCIO、研究部門のトップに聞いてくれ、といったCEOもいましたが、現在はそのようなトップはいません。テクノロジーの社会や業界へのインパクト、そして自社はそれにどのように取り組むべきか。トップの頭の中の相当部分がその様な思考で占められています」

 では、経営層はテクノロジーをどのように事業で活用したいと考えているのか。池田氏は顧客接点の強化が今まで以上に重要になると読む。その上で、それぞれのテクノロジーに合わせたアプローチができるのではないか、と提言した。

「90年代の後半には、どのインターネットプロバイダを選択するかがネットユーザーの一大関心事になった時代がありました。回線速度、月額料金などを細かくチェックし、よりお得で便利なプロバイダーを選ぼうという風潮がありましたね。しかし、今ではそこに関心を持つ人はなく、話題にのぼることもありません。無色透明な、コモディティなサービスになったからです。

 今後はサーチエンジン、ソーシャルメディア、eコマースもそうなっていくでしょう。そこでコモディティ化を避けるため、各企業が注力しているのが自社が顧客接点を抑えて価値ある体験を提供し、かつ顧客への理解を深めることです。エンターテインメント、ゲームなど様々なフィールドが考えられます。今後は、誰がその接点を抑えるのかという戦いが起きていくはずです」

「IoT、AIは言うまでもなく、モバイル、ウェアラブルも活発化の兆しが見えます。そこでは次世代の5G通信が市場に大きなインパクトをもたらしそうです。これらのデジタルテクノロジーは今まで考えもしなかった新しいサービス、体験を作り出すような可能性を秘めています」

「これらのテクノロジーが、どれだけ便利で、楽しい体験を顧客に提供できるのか。企業に対してもどのようなビジネスモデルを構築し、課題をいかにして解決していくのか。従来の業界の境界線を越え、さまざまな企業が集まってくる時代です。自社だけではなく、多様なアライアンスパートナーと組んで考え、新たなものを生み出していくべきでしょう」

 ディスラプションをもたらしたデジタルテクノロジーを先んじて取り入れ、経営に積極的な変革をもたらしていく。池田氏が見続けるグローバル経営層の歩みは、次代のイノベーションに続いていく。