日本アイ・ビー・エム執行役員 戦略コンサルティング&デザイン統括 池田和明氏

 しかし、既存企業のすべてが新しい波に乗れているわけではない。ディスラプションをもたらすことができるのは、業界内の「革新的な」既存企業という留保がつく。「革新的な」既存企業と、その他多くの既存企業の違いはどこに現れるのだろうか。池田氏によると、その違いは「激変するビジネス環境に最適な実行力を持てるかどうか」だという。たとえばそれは、早期から顧客を巻き込み、試行錯誤しながら事業として進化させていく「リーンスタートアップ」、ソフトウェア開発における「スクラム」「アジャイル開発」といった手法に代表されるものだ。もちろん、それらの手法は多くの経営層が意識している。しかし、「実行」できていない企業が多いのも現実だという。

「スクラム、アジャイル開発、リーンスタートアップの有効性に異を唱える経営者はあまりいないでしょう。

“実験は5回に3回は失敗する。それより成功率が高いのであれば、もはや実験ではなく、背中を押してくれる結果を待っているだけだ。そんなやり方では頭1つ抜き出ることはできない。”

 これは、グローバル経営層スタディで引用した経営者の言葉です。創造的破壊をもたらすためには、試行錯誤が必要だと思います。日本の企業は成功事例、先行した事例を重んじる傾向がありますが、現在はビジネス環境にとどまらず、すべて変化が激しい時代です。リサーチにばかり時間を費やすのではなく、最初に仮説を立て、まずは取り組む。創造的破壊をもたらす企業、踏み込めない企業の違いはそこに現れるのではないでしょうか」

強い「既存企業」には、強い理由がある