消費者にとって情報銀行はどのような存在となるのか
では、消費者の立場から見た「情報銀行」はどうだろう。正直、「個人情報を預ける」という響きに抵抗を感じてしまう人も多いのではないだろうか。2017年1月27日にインテージが発表したデータ流通とプライバシーに関する意識調査の結果を見ても、情報銀行を「利用したい(3.6%)」または「どちらかと言えば利用したい(29.9%)」と回答したのは全体の33.5%。PDSに関しては6割以上が利用意向ありと回答しており、多くの消費者が第三者に個人情報を預けることに不安を感じており、「個人情報は自分で管理したい」と考える傾向にあることが分かる。
企業による個人情報の管理の仕方は度々問題視されるが、最近では2018年3月にイギリスのデータ分析会社ケンブリッジ・アナリティカがSNS「Facebook」の利用者の個人情報を不正に収集していたことが発覚。さらにそのデータを使い米大統領選を操作していたという疑惑が持ち上がり、大きな波紋を呼んだ。
現状、情報銀行事業を行えるのは日本IT団体連盟による審査に通過して認定を受けた企業のみとなるが、慎重な消費者は自分の情報を預けるに相応しい企業かどうか、厳しい目で見定めることになるだろう。
一方で情報銀行は、個人に代わりパーソナルデータを渡す事業者を審査する役割を持っている。現状においても消費者は、何か新しいサービスの利用を開始する際は「利用規約」や「個人情報の取扱いについて」といった長々とした文章に「同意」させられている。しかし、その内の何人が提示された規約全てを熟読し、納得した上で「同意」しているのだろうか。2018年12月27日に日本IT団体連盟が発表している、日経クロストレンドのインタビュー記事内で、情報銀行の認定基準制作に携わった崎村夏彦氏は「まず、個人の同意能力を疑ってかかるべき」と発言している。
その点、情報銀行が持つ「情報信託機能」とは、本当にその規約に同意して良いかどうか、その企業に情報を渡して良いのかを個人に代わり判断してくれるものなのだ。もちろん、その情報の取得方法や利用目的は事前に分かりやすく明示するよう「情報信託機能の認定に係る指針ver1.0」でも記されている。
加えて、万が一情報銀行から情報が漏えいした場合について同指針を見ると、「提供先第三者に帰責理由があり個人に損害が発生した場合は、情報銀行が個人に対し損害賠償責任を負う」とされており、事業参入には相応のハードルが存在することを示している。
様々な個人情報を預ける代わりに、より便利で快適な生活を実現する情報銀行。それだけでなく、個人情報を守るための「盾」の一種として捉えると、消費者側にとってもメリットは少なくないのではないだろうか。