信用スコアリングがもたらす新たな経済圏
先にメルペイを例に挙げたが、実は国内では既にヤフーやLINE、NTTドコモといった大手企業が信用スコア事業への参入を発表している。ただ、現段階では個人向け融資における新たな審査基準、といった向きが強い印象だ。
例えば、LINEの個人向けスコアリングサービス「LINEスコア」は、LINEや提携サービスの利用履歴等を基に独自スコアを算出し、それを無担保ローンサービス「LINEポケットマネー」利用時の貸付利率や利用可能限度額を決定すると2018年11月27日に発表している。
一方ヤフーは2018年10月10日、ヤフーショッピングやヤフーウォレットのような直接金銭に関連するデータ以外にもYahoo! JAPAN IDにひもづく検索履歴やニュースの閲覧履歴等、同社が保有するビッグデータを基にスコアを算出し、活用する実証実験を行うことを発表した。スコアの活用によってシェアリングサービス領域における「安心して物の売買・貸し借りができる」環境の構築が期待されているが、提携サービスの数次第ではないだろうか。
芝麻信用は「身元情報」「支払能力」「クレジットヒストリー」「交友関係」「消費傾向」といった5つの要素から算出されるが、詳しい算出方法は明らかにされていない。見えない尺度で自分の信頼力を数値で決定されてしまうことに抵抗を覚える人もいるだろう。それでも利用されているのは、スコアが高い場合に受けられるメリットが大きいからだ。もちろん国民性の違いもあるだろうが、企業に様々な情報を収集される抵抗感をメリットが上回ると判断した人々が一定数以上存在するからこそ、信用スコアは成り立っている。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が2018年12月11日に発表した「2018年度情報セキュリティに対する意識調査」の個人情報の取り扱いについての項目を見ると、既往歴や健康診断の結果などの情報が漏えいした場合は補償不要(0円)と考える人の割合が最も多いが、氏名・住所や電話番号等、連絡先情報の保証額は50,001円以上(同調査で選択できる最高金額)と考える割合が最多。信用スコアは、当然これらの本人特定につながる情報と、様々な情報をひもづかせることで成り立つ仕組みだ。利用者に広く受け入れられるには、スコアの活用によってどういった恩恵を得られるのか、明確に示す必要があるだろう。
物を買って、メルカリで売る。売上金を使ってまた買い物をする。このサイクルの適用範囲を着々と拡大し、正しく「経済圏」を形成しているメルペイ、そしてメルカリ。その視線の先を思えば、今回リリースされた「メルペイ」は単なる「メルカリ」の一機能ではない。
より多くの賛同者を得て、個人の「信用」が支える経済圏を創る先導者となるのはメルカリ・メルペイなのか、それ以外の企業なのか。「キャッシュレス」社会の先にあるものを見据えていきたい。