テクノロジーで小売業界はどう変わる?

 小売り(リテール)事業に最新テクノロジーを導入する「Retail Tech(リテールテック)」。2018年1月22日に米シアトルで開業した無人コンビニエンスストア「Amazon Go」に代表される無人店舗はまさにRetail Techの塊だが、労働力不足が叫ばれる日本においても特に期待されている領域だ。

 また、人々の消費行動が「モノ」から「コト」へとシフトしつつある中で、ユーザーにより魅力的な体験を提供するためにテクノロジーを活用しようとする向きもある。最新事例やトレンドを参考に、Retail Techが小売業界にもたらす変化について見ていこう。

社会的背景からも期待が高まるRetail Tech

 冒頭で触れた通り、少子高齢化を迎え労働力不足が深刻化する先進国において、テクノロジーによる業務の効率化・省人化は業界問わず対応すべき重大な課題だ。

 また数年前「店舗で実物を確認した後に、価格の安いオンラインショップで購入」する「ショールーミング」が話題となったように、実店舗はECサイトと異なる価値の提供によって差別化し消費者の獲得を図るべく、対応を迫られている。加えて「モノ」から「コト」消費への変化である。

 社会的な背景や消費者の価値観の変化が訪れる中、小売業界が先端テクノロジーで時代の変化に対応しようとするのは必然の流れといえる。

 ところで“小売りとテクノロジー”といえばEC、特にBtoCならAmazonを思い浮かべる方も多いだろう。近年の商品ラインナップの拡充ぶりから、いずれは全ての買い物をAmazonで行うようになりそうだ、と考える方も少なくないのではないだろうか。

 事実、2018年7月にPwC Japanグループが発表した「世界の消費者意識調査2018」(日本語版)によれば、調査対象となった世界27ヵ国2万2000人以上の消費者のうち、59%もの人々がAmazonや中国のJD.comとAlibaba TMALLで買い物をしていることが判明している。加えて「購入はAmazonのみで行う」というヘビーユーザーも、昨年の10%から4ポイント増加して14%となっている。

 しかし同時に、小売売上全体のうち、Amazon経由の売り上げはわずか4%に留まることも明らかになっている。また、「価格をAmazonで調べる」(47%→41%)、「商品検索をAmazonから始める」(39%→36%)、「(Amazonでの買物によって)小売店での購入が減った」(28%→27%)、「他のECサイトでの購入が減った」(18%→16%)と回答した消費者の割合はいずれもわずかながら前年に比べ減少している。

 さらに同調査では、世界のBtoCビジネスにおけるeコマースのシェアは15%にも満たないことや、実店舗を週1回以上訪れる買物客の割合は、2013年の42%から2015年に36%に減少したものの、それ以降は一貫して増加しており、今回の調査では44%にまで持ち直したことも明らかとなっている。

 一部のECサイト大手の躍進ぶりに目を奪われてしまいがちだが、オンラインショッピングの台頭によって実店舗を訪れる消費者がいなくなってしまったわけではないことや、メーカーや従来型の小売業者にもまだまだ成長可能性が残されていることが分かる。そして企業に成長機会や新たなビジネスモデルを生み出すきっかけをもたらすと期待されているのが、Retail Techなのだ。