中国の芝麻信用に見る日本の未来
では具体的に、メルカリが目指す未来とはどういったものなのだろうか。それを考えるために参考になるのが、個人の信用力を数値化した「信用スコア」だ。今回は中国で普及している「芝麻信用」を例に挙げる。
芝麻信用は、多くの中国人が愛用する「アリペイ」の付帯機能として2015年に登場した。アリペイでの支払い履歴の他に、学歴や職歴、支払能力や交友関係を基に、350~950点の間で各人のスコアを算出。点数が高ければ、ホテルや病院の利用をする際にデポジットが不要となったり、金融商品の金利が優遇されたりといった特典を受けることができる仕組みだ。他にも一定点数以上の参加者のみが参加できる婚活サイトも登場するなど、中国政府が進めている「社会信用システム」とは異なるものの、中国社会に大きな影響を与えている。
また、KDDI総合研究所が2018年9月10日に発表したレポート「中国信用社会に向けたネットの取り組み~芝麻信用の信用スコアが消費行動を変えた!?~」によれば、2017年以降、芝麻信用の信用スコアをデポジット不要のレンタルサービスへ活用する動きが急速に拡大したという。スコアが高ければデポジットを支払うことなく、シェア傘やレンタカー等をその場で借りて利用することができるが、一方できちんと返却しなければスコアに傷が付き、今後のサービス利用に支障をきたすというわけだ。
同レポートはこの動きについて、2017年後半に中国各地で次々に登場し、消えていったシェアサイクルサービスを一因に挙げている。倒産する際、ユーザーから回収したデポジットを返金しないまま夜逃げするシェアサイクル事業者が続出したというのだ。これにより消費者の間でデポジットに対する抵抗感が高まり、信用スコアによる「デポジット免除」に魅力を感じる人が増えたのではないかという。
さらに、芝麻信用が2017年3月に発表した調査結果では、信用スコアの導入によってレンタカーの利用費用の踏み倒しが52%減少、交通罰金踏み倒しが27%減少、車の紛失が46%減少したという。さすがにこの結果をそのまま日本に当てはめて考えることは難しいが、信用スコアの導入に、不正利用を防ぐ効果が存在することは確かだろう。
加えて信用スコアは、多角的な視点から個人を評価することで、フリーランサーや若者等、既存の尺度では信用力が低いと見なされてしまう人々をすくい上げる効果も期待できる。