高品質サービスを実現する一専多業人材育成の仕組み

 「日本発」を掲げるレイヤーズ・コンサルティングは、日本文化に根差した経営の実践に価値を置く。代表取締役CEOの杉野尚志氏は「当社は顧客企業との中長期的関係を築くために、時にはコストを度外視しても、サービスの品質を追求するように気概をもって業務に当たっています」と語る。

代表取締役CEO 杉野 尚志 氏

プロジェクトの進め方は、欧米流のトップ・ダウン一辺倒ではなく、コンセンサスを得ることに労力を傾ける。ビジョンやミッションを確認したうえで、徹底的な議論を経て、プロジェクトに懐疑的なメンバーにも十分に納得してもらう「共振」と呼ぶプロセスを重視する。「共振」において特に気を配るのがミドル・クラスだ。「主軸となって会社を動かすミドル・クラスの意識がまとまってこそ、日本企業は力を発揮する」と杉野氏は語る。同社は、経営者と社員との互恵的な関係や、短期的な結果よりも、中長期的な企業価値向上を重んじるこの国特有のカルチャーに着目、外資系とは異なるサービスを展開してきた。

特に同社で定評があるのは、経営管理、新規事業開発、サプライチェーン・マネジメント、IT、人事など、分野をまたいだプロジェクトのシームレスな支援だ。「総合的施策が必要で難しい仕事こそ、幅広い知識を持つ当社のコンサルタントが、その強みを発揮できる」(杉野氏)と自負する。この強みを生み出しているのが、同社特有の人材育成システムだ。

入社10年目くらいまでのコンサルタント、シニア・コンサルタントの社員は、グループ・グローバル経営管理、ガバナンス経営基盤、成長戦略、新規事業開発、営業強化・業務改革、サプライチェーン・マネジメント、ヒューマン・リソース・マネジメント、ITマネジメントの各分野を一通り、ジョブ・ローテーションで経験する。そのうえで、マネージャーに昇進後は、経営管理、事業戦略、サプライチェーン・マネジメント、ITの各事業部いずれかに属して専門性を磨く、「一専多業」のキャリア・パスとなっている。

杉野氏は「自分の専門しかわからないという、バランスを欠いたコンサルタントでは、顧客企業の経営者とのコミュニケーションは困難です。どんな分野の質問でも対応できる、かかりつけ医のようなコンサルタントとして顧客企業に接することで、信頼関係を築けるはずです」と“多業”の重要性を強調する。

こうして数を頼みにせず、品質重視でサービスを提供してきた同社だが、取り組みに賛同する企業経営者らでつくる経営諮問委員会(委員長 オリックスシニア・チェアマン宮内義彦氏)の委員や顧問からは、規模をある程度拡大することで存在感を発揮し、さらに企業価値を高めてはどうか、との助言があるのだという。

レイヤーズ・コンサルティングには、その理念に対してファンとも言える企業が多く存在する。そうした企業の声に応じるべく、同社は組織の増強に踏み出している。