「上海の日本人居住者がどんどん減っています」――上海で日本人向けに食材を販売する経営者が明かす。
食材店だけではない。上海では、病院や日本語学校などでも、日本人の利用者は減少傾向にある。
これは、数字をみても明らかだ。外務省の海外在留邦人数調査統計によれば、上海の在留邦人は2007年にニューヨーク、ロサンゼルスを抜いて1位(4万7731人)となり増加の一途をたどったが、その後、2012(平成24)年の5万7458人をピークに減少に転じる。人件費高騰による工場の撤退などの要因で、多くの駐在員とその家族が帰国の途についたのだ。そして2017年は4万3455人にまで減少した。都市別ランキングでは4位だった。
上海には、独資で会社を設立した中小企業の経営者や、日本企業の現地法人などで働く日本人が数多くいる。2000年代前半、上海に乗り込んだ日本人が異口同音にコメントしていたのは、「中国には市場があり、上海には日本にはない闊達さがある」というものだった。上海ビジネスにどっぷり漬かる人たちも多く、「上海マイコツ(埋骨)会」と称した集まりもできた。
だが今、滞在歴が10年、20年を超える“ベテラン”駐留者たちですら、先を争うように帰国しようとしているのだ。
帰国を急ぐ理由はさまざまだ。年齢や家庭の事情などもあるだろうが、特に外国人が居留証を申請しにくくなったことは大きい。