白人草の根大衆が求めた「尊厳」と「認知」
日系米人政治学者、フランシス・フクヤマ氏の新著が9月11日に発売される。筆者は発売前に入手した。
タイトルは 『Identity: The Demand for Dignity and the Politics of Resentment』(アイデンティティ:尊厳への要求と憤りの政治)。
2011年に出版された『Political Order and Political Decay』以来7年ぶり。ドナルド・トランプ政権が発足して以降初めてとなる。
フクヤマ氏は、「Liberal Democracy」(自由民主主義)が最終的な勝利を収めることで社会制度の発展が終わり、人類発展としての歴史が「終わる」という主張した著書『The End of History and Last Man 』(邦訳『歴史の終わり』)で世界的に注目された。
その後、ネオコン(新保守主義派)の知恵袋的存在となったが、ジョージ・W ・ブッシュ政権のイラク政策を激しく批判。
2006年以降はネオコンとは距離を置き、ネオコン支持路線に対するそれまでの主張を撤回している。
そのフクヤマ氏がトランプ大統領をどう見ているのか。トランプ大統領の「ちゃぶ台返し」政治をどのように分析しているのか。トランプ政治を歴史的観点からどう位置づけるべきか――。
アングロサクソン国家に現出した
「大衆ナショナリズム」の正体
実は、同氏は本書の構想を練っていたとされる2017年春、ワシントン・ポスト紙とのインタビューで2016年の米大統領選結果についてこう述べていた。
「自由民主主義の古典的なアングロサクソン国家(英米)でポピュリスト・ナショナリズム(大衆民族主義)の波が生まれた事実は驚き以外のなにものでもない」
「トランプ氏は、大統領職を全うするための準備もなく、その激しい気性や気質は到底大統領としては不適格な人物だ」
「国際秩序を堅持するための米国の役割について公然と異議を唱えた米大統領はトランプ氏が初めてだ」
("Francis Fukuyama: Democracy Needs Elites," Alexander Gorlach, Washington Post, 3/2/2017、https://www.huffingtonpost.com/entry/francis-fukuyama-democracy-elites_us_58b5a2cfe4b0780bac2d8ea3)