6日の米株式市場では、ニューヨークダウ工業株30種平均が8512.28ドル(前日比+101.63ドル)となり、約4カ月ぶりに8500ドル台を回復した。
結果正式発表前の観測報道をもとにしたストレステストについての安心感に加え、米国に限らず世界各国で見られている景気指標「安定化」の兆候から、経済・金融全般について楽観論が台頭していることが背景。
筆者は4月20日のNYダウ大幅安を見て、楽観論が強まる流れがいったん潰えるのではないかと予想したが、実際にはそうはならず、株価は大きく切り返す動きになっている。
前日比200ドル超のNYダウ騰落日数カウントは、4月月間で「2勝1敗」となり、昨年8月以来の勝ち越しを記録。5月に入ってからは、4日に前週末比+214.33ドルを記録し、勝ち星が先行している。
しかし、米国の長期金利は、10年債が3%台、30年債が4%台にそれぞれ乗せるなど水準を切り上げてはいるものの、上昇には勢いがついていない。需給面の材料として、国債増発と連邦準備理事会(FRB)による長期国債購入(および将来の継続・増額観測)が綱引きをしているという事情はあるが、株価に比べて将来のインフレ見通しや金融政策動向に強く影響される債券相場にとって、それ以上に重要なのは、(1)構造調整下での景気回復力の脆弱さ、(2)デフレリスクの存在、の2点であろう。
連邦公開市場委員会(FOMC)内でハト派論客の筆頭格であるサンフランシスコ連銀イエレン総裁が5日にカリフォルニア大学バークリー校で行った講演「クレジットクランチとグローバルリセッションにより提起された諸問題」は、上記2点を確認する上で有用である。
イエレン総裁はこの講演の最初の部分で、米国経済は「屈曲点(inflection point)」に到達したのかもしれないとしつつも、それを確認するのは時期尚早で、数多くのダウンサイドリスクがある、と言明。いくつかの楽観論の根拠は少なくとも見出せるものの、「それがいつ始まるにせよ、景気回復は過去の深いリセッションの後に起こったものに比べて、かなり緩やかなものになるだろう」とした。