ロシアも移民対策強化

 ロシアでは、3月22日、モスクワ郊外のクラスノゴルスク市のコンサートホールに武装したテロリストが侵入し、銃撃して143人を殺害し、180名以上を負傷させた。また、その後火災が発生し、建物が炎上した。実行犯として、中央アジアのタジキスタン人4人が起訴された。

 この事件の後、ロシアでは不法移民の取り締まりが強化された。内務省は、4月10日、移民関連の法律違反で6000件以上を特定し、外国人836人を国外追放したと発表した。

 外国人に対して指紋登録や顔写真撮影を義務化するなど、出入国管理を強化している。

 中央アジア出身の移民は、労働力としてロシア経済を支えており、とくにウクライナ侵攻後は労働力不足を補う貴重な戦力となっている。今、350万人〜500万人の外国人労働者がロシアにいるとされているが、2023年末時点で、480万人の労働力が不足しているという。

 イスラム過激派のIS(Islamic State、イスラム国)と関係のある「アマーク通信」は、今回のテロ事件がISの戦闘員によるもので、「ロシア人キリスト教徒への攻撃だ」と伝えている。

 タジキスタンは、旧ソ連邦を構成する国のなかでも最貧国であり、それだけに、生活苦からISに走る若者が多い。約100万人が海外で働き、彼らからの送金がGDPの約3割を占めている。

 2003年3月20日、アメリカを中心とする西側諸国はイラクに侵攻し、サダム・フセイン体制を倒した。この後、欧米に対抗するためにアルカイダ系のイスラム教スンニ派の過激派が結成されたが、これがISの起源である。