中国のアプリ規制強化、さらなる削除に直面か

 ただ、中国政府にとってはこれらアプリは悩みの種のようだ。当局は23年、モバイルアプリ開発者に対して、24年3月までにアプリを規制当局に登録するよう義務付けるよう命じた。命令に従わないアプリは、App Storeから削除されるとした。当局はその理由として、電話詐欺に関与するものなど、安全性の低いアプリを排除する取り組みの一環だと説明した。

 これを受け、アップルの幹部は当局者と会談し、アプリ配信を制限する同国の新規制に対する懸念を表明した。しかし、当局はアップルに対して、規制を徹底順守するよう要求した。

 中国は検閲と言論統制を強化し、プラットフォーム運営者に対しネット空間での活動を厳格管理するよう求めている。20年には、当局の認可を得ていないゲームアプリに対する取り締まりを強化した。これを受けアップルはゲームアプリ数千本を削除した。17年にはグレート・ファイアウオールを回避する目的の数十本のアプリも削除した。

「代償の増大」、アプリ削除がもたらすアップル経済圏の分断

 アップルによるアプリ削除は、中国におけるiPhoneエコシステム(経済圏)をますます西側諸国から切り離すことになると、WSJは報じている。中国版App Storeでは、「Reddit」「Spotify」「ChatGPT」といったグローバルアプリを含め、計1万4000本以上が入手できない状況だ。これら削除されたアプリには、インターネット検閲回避ツールやメッセージアプリ、LGBTQ+コミュニティーに関するものがあるという。

 当局によるアプリ規制強化は、世界最大規模の消費者市場である中国で事業展開を続けるアップルにとって、「代償の増大」を意味するとWSJは指摘する。

中国でのスマホ事業とサービス事業

 中国の華為技術(ファーウェイ)は24年4月18日、高価格帯スマホの新製品「Pura 70」の販売を開始した。アナリストらは、この端末が中国でiPhoneの市場シェアを一層低下させると予測している。香港の調査会社カウンターポイントリサーチは、24年のファーウェイの中国におけるスマホ販売が39%増加するとみている。一方、中国では消費者需要の低下がiPhoneの販売に重くのしかかっているという。

 加えて、App Storeを含むサービス部門はアップルの成長に重要な役割を果たしており、今後同社の事業が打撃を受ける可能性もある。

 23年10~12月期のアップルの中国事業売上高は、前年同期比13%減の208億1900万ドル(約3兆2200億円)で、前四半期に続き減収だった。

 同四半期におけるアプリ・音楽・動画配信などのサービス部門の売上高は11%増の231億1700万ドル(約3兆5700億円)で、前四半期に続き過去最高を更新した。同部門の200億ドル超えは5四半期連続で、アップルの全売上高に占める比率は約19%になった(独スタティスタのインフォグラフィックス)。