©大和和紀/講談社©大和和紀/講談社

2024年のNHK大河ドラマ「光る君へ」の主人公紫式部は、現代にまで読み継がれるベストセラー『源氏物語』を書き上げた。難解とされる源氏物語を漫画化したのが大和和紀『あさきゆめみし』だ。太陽の地図帖『大和和紀『あさきゆめみし』と源氏物語の世界』(太陽の地図帖編集部編、平凡社)からの引用を交え、源氏物語の世界を紹介する。

◎本稿は、平凡社のWebサイト「Web太陽」に掲載された記事を転載したものです。

『源氏物語』に登場する数多の女君の中で、特に女性人気が高いのが、六条の御息所(ろくじょうのみやすどころ)という。一方で、「嫉妬する女」のイメージが強いからか、「怖すぎる」と男性人気は低い。もちろん、嫉妬するのには訳があるのだが……。では、六条の御息所とは、どんな人物なのか。

六条の御息所の造型に参考にした絵とは

『源氏物語』を漫画化した『あさきゆめみし』の作者、大和和紀は、六条の御息所を「哀しい貴婦人」と解釈した。

――前春宮(とうぐう)妃であったというプライド、年上の女性としての矜持があり、嫉妬しているところさえも知られてはならない。その抑えに抑えた感情が、生霊化してしまった、哀しい貴婦人です。
(P42「女君で旅する『あさきゆめみし』」より)

 六条の御息所の造型に関して、大和が参考にした絵があるという。

 日本画家・上村松園による『焰』が、その絵だ。

――数々の美しい女性を描いた松園自身が、『焰』について「私の数多くある絵のうち、たった一枚の凄艶な絵」と語っている(*)が、『あさきゆめみし』の六条の御息所も、確かに他の女君たちの追随を許さない凄艶さをもって描き出されている。
(P44・吉井美弥子「六条の御息所に想を得た、上村松園『焰』に共鳴」より)

(*)上村松園『青眉抄』(講談社文庫)所収

『焰』 上村松園/画、大正7(1918)年(出典:国立文化財機構所蔵品統合検索システム)『焰』 上村松園/画、大正7(1918)年(出典:国立文化財機構所蔵品統合検索システム