©大和和紀/講談社©大和和紀/講談社

2024年のNHK大河ドラマ「光る君へ」の主人公紫式部は、現代にまで読み継がれるベストセラー『源氏物語』を書き上げた。難解とされる源氏物語を漫画化したのが大和和紀『あさきゆめみし』だ。太陽の地図帖『大和和紀『あさきゆめみし』と源氏物語の世界』(太陽の地図帖編集部編、平凡社)からの引用を交え、源氏物語の世界を紹介する。

◎本稿は、平凡社のWebサイト「Web太陽」に掲載された記事を転載したものです。

『源氏物語』の主人公・光源氏は、天皇の息子(皇子)。しかし、母の身分が低いため、後ろ盾がなく、親王にはなれず、「源」の姓を賜り、臣籍降下した。さらに、母も幼い時に亡くしている。

 つまりは、高貴な生まれではあるものの、決して恵まれていたわけではなく、むしろ、自身の美貌と才覚を武器に、宮廷社会という荒波を乗り越えていく。

光源氏には大きな難点が

 貴種ながら不幸な生い立ちで、圧倒的な魅力を放つ男――。まさに、少女漫画のヒーローにふさわしい資質の持ち主に思えるが、光源氏には大きな難点がある。それは、華麗すぎる女性遍歴……。そう、光源氏は「恋多き男」なのだ。

『あさきゆめみし』の作者・大和和紀は、次のように語っている。

――それにしても、主人公の光源氏は多情すぎて、「少女漫画の主人公」には向かないキャラクターなのではないでしょうか。

「そうですよね、原作では「女癖の悪いひどい男」ですよね。こちらの女君に「あなただけです」と言いながら、あちらの女君にも「あなただけです」と同じことを言って……。どの口が言うか! と腹が立つことばかり……(笑)。」
(P19「大和和紀ロングインタビュー・第一部」より)

『源氏物語絵巻断簡』に描かれた光源氏/平安時代(出典:国立文化財機構所蔵品統合検索システム)『源氏物語絵巻断簡』に描かれた光源氏/平安時代(出典:国立文化財機構所蔵品統合検索システム