その異様さが目を引いた。「他店に比べて決して安くありませんでした」「売り場には欲しいと思える商品が並んでいませんでした」「お客さまへのサービスを怠っていました」・・・。消費者に対するお詫びの言葉が大きな文字で並ぶ。「反省」と題し、イオンが主要紙の3月19日付朝刊に掲載した全面広告である。
「反省」という言葉を活字にしてみると、何かウソ臭く感じてしまうが、イオンは本気らしい。郊外型大型商業施設の積極的な出店をテコに、大量仕入れや大量販売で高成長を遂げたイオン。ついこの間まで安泰だったはずなのに、敢えて自らのやり方にダメを出し、一から出直しを図る。
そうしなければ、いま直面している難局を乗り切ることはできないし、選別意識を強める賢い消費者から、もはや支持されない・・・。とでも思っているようだ。出直しの気持ちを新聞広告で潔く消費者に示す。それは、いまの消費不況が生半可なものでなく、しばらく続く可能性が大きいと流通業界の巨人が見ている証拠ではなかろうか。それほど小売業界を取り巻く環境はかつてなく厳しい。
スーパー「2強」、体力勝負の値下げ合戦
2月の全国スーパー売上高は9526億円と、1991年2月以来18年ぶりに1兆円を割り込んだ。昨年半ば以降、吹き荒れる不況風に煽られ、消費者の節約志向は強まるばかり。セールや特売の低価格品に目が向き、単価の高い商品は敬遠される。さらに2月は、暖冬の影響でコートや暖房器具、鍋物関連などが不振だったという。天候とは対照的に、スーパーの店内は「底冷え」が続いていたのだ。
固くなった財布のヒモを緩めようと、これまでもイオンはあれこれ対応策を打ち出してきたが、いっこうに効果が表れない。とうとう2009年2月期の連結純損益は7年ぶりに赤字転落の可能性が出てきたため、もはや一刻の猶予も失った。
大手総合スーパーではイオンと「2強」の存在にあるセブン&アイ・ホールディングス傘下のイトーヨーカ堂も、抱える状況はそう変わらない。イオンもイトーヨーカ堂も、消費者を呼び戻すために今必要なことは、まず第一にこれまで以上の安さと判断したのだろう。3月に入り、両社は相次いで食品や生活関連商品などの値下げに踏み切った。2強による体力勝負の値下げ合戦が始まったわけである。
低迷する株価、悪化を続ける各種経済統計・・・。消費者はこうした世の中の動きに敏感に反応し、その結果として消費マインドが大幅に低下。マインドを好転させるような動きは、とんと見当たらない。
今春闘では、経営側が軒並み4年ぶりのベア・ゼロを回答し、一部の企業では定期昇給の一時凍結にまで踏み込んだ。日本経団連の御手洗冨士夫会長は、この春闘結果が景気に与える影響について「政府の景気底割れを防ぐ連続した対策もだんだんと効いてくる。(春闘結果により)景気が後退するとは思わない」と語ったが、そうであってほしいとの願望を述べただけだろう。
そうでなければ、あまりにも楽観的な発言である。普通に考えれば、消費者のマインドはこれでさらに悪化。大きな買い物や高額品の購入は手控え、少しでも安いものを買おうという消費者心理が働くはずである。
3月18日だった今春闘の集中回答日に合わせるように、イオンとイトーヨーカ堂の値下げがそれぞれ20日、18日から実施されたのは偶然ではなかろう。