「神風」は鎌倉幕府が喧伝?

 さて、ゲーム紹介サイトも含めて元寇に言及している中国語サイトを見渡してみると、現代中国人が元寇をどう捉えているかが見えてきました。

 結論から言えば、「日本への遠征は大失敗だった」という見方が大半のようです。失敗の原因としては、「神風」こと台風によって致命的な被害を受けたこともありますが、最大の原因は日本武士団の頑強な抵抗だと指摘する意見が多いようです。

 その神風について、あるサイトでは「鎌倉幕府が喧伝したのではないか」という指摘がありました。鎌倉幕府は元軍を追い払ったものの、新たに獲得した領土がなく恩賞のやり繰りに困り、意図的に流布したのではないか、という意見です。つまり「元軍に勝てたのは神風のおかげである」という雰囲気を作ることで、恩賞を与えられない武士の不満を鎮めようとしたのではないか、ということです。

 実際、神風信仰は、元軍に勝利した直後ではなく、しばらく経ってから徐々に広まったという研究もあります。「幕府が『神風』を喧伝した」という説は十分に検討に値する興味深い指摘だと思います。

范文虎はスケープゴート?

 もう1つ、中国語サイトの元寇に関する記述を読んでいて興味を引かれたのは、「范文虎(はん・ぶんこ)スケープゴート説」です。

 范文虎は南宋の元将軍で、南宋の滅亡時に元に降伏しました。その後の「弘安の役」では旧南宋軍(江南軍)を率いる司令官となり、日本に侵攻しました。しかし台風に見舞われた後、鷹島(長崎県松浦市)に残った多くの将兵を見捨てて、わずかな手勢とともに逃げ帰ったことが史料に記されています。

元寇で元軍が上陸した鷹島のモンゴル草原(長崎県松浦市ホームページより)