- イスラエル・ハマス紛争に関連したSNSの投稿で、親パレスチナの立場を示すものが検閲され、運営会社が意図的にユーザーの目に触れにくくしているのではとの疑いが生じている。
- こうした行為は「シャドーバニング」と呼ばれる。SNS運営会社は否定しているが、「検閲」をかいくぐろうと、ユーザーらは「絵文字や暗号などを駆使した投稿で抵抗を」と呼びかけている。
- SNSのプラットフォームで言論を守ろうとする戦いは、まるで「ゲリラ戦」の様相を呈している。(JBpress)
(楠 佳那子:フリー・テレビディレクター)
イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が続く中、インスタグラムなどのSNS上で、親パレスチナの立場を示す投稿が「検閲されているのではないか」との疑いが海外メディアで相次いで報じられている*1。
*1:関連記事
◎Instagram users accuse platform of censoring posts supporting Palestine(英ガーディアン)
◎Pro-Palestinian Instagram account locked by Meta for ‘security reasons’(英ガーディアン)
英高級紙ガーディアンは10月18日の記事で、ユーザーが紛争の続くパレスチナとイスラエルについて、インスタグラム上24時間で消える「ストーリーズ」機能を使って投稿すると、突然閲覧数が激減したという現象が急増していると報じた。ある在米ユーザーがパレスチナ関連の投稿をし始めたところ、900人近くいるフォロワーの数人から、彼女の投稿がインスタのフィードのトップに示されなくなったと指摘を受けた。投稿に反応することはおろか、この人物の名前を検索することすらできなくなったとの報告も受けたという。
同紙は26日にも、親パレスチナ系のインスタグラムのアカウントが「安全上の理由」から凍結されたと伝えた。30日時点で730万人以上のフォロワーを有するアカウント @eye.on.palestineには、イスラエル軍によるガザ地区の空爆とそれによる被害状況などを、救出や手当を必要とする血まみれの子供たちや、遺体なども含め、動画や画像で伝えている。英国時間の30日早朝には閲覧が可能になっているが、ガーディアンによると25日から、少なくとも26日昼頃までは、見ることができなかったという。
同じような事例が、中東カタールの衛星放送局、アルジャジーラでも報じられている。あるベルギー在住の映像制作者兼活動家の男性が、パレスチナに関する動画を「虐殺」という言葉と共にTikTok(ティックトック)に投稿したところ、当初は閲覧数が急伸したにもかかわらず、「いいね」などのエンゲージメントが突然停止してしまったという*2。
*2:Are social media giants censoring pro-Palestine voices amid Israel’s war?(アルジャジーラ)
ガーディアンもアルジャジーラも、イスラエルとハマスの衝突開始以来、こうした事例が数百件に上ると指摘している。アルジャジーラはインスタグラムとTikTokの他にYouTubeやフェイスブック、Xでもこうした「検閲」が生じていると言及した。
親パレスチナの投稿のリーチが広がらないよう故意に減らしたり、他のユーザーの目に触れないよう隠したりする行為「シャドーバニング(Shadow Banning)」が横行しているのではないかとの疑問を呈している。シャドーバニングとは、SNSを運営する企業が独自に望ましくないと判断した投稿を、故意にユーザーの目に触れにくくする行為のことを示す。