CGに頼らないからこそ滲み出てくる臨場感

『VIVANT』は制作期間自体が長い。通常のドラマは2カ月半前後だが、モンゴルでのロケだけで2カ月半を費やした。じっくりと撮った。これも制作費があるから可能だった。

 TBS関係者によると、CGをほとんど使っていないのも特色の1つ。CGに頼らないことによって、映像のリアリティと臨場感が高められている。NHK大河ドラマ『どうする家康』(日曜午後8時)は馬をCGで表現し、酷評されたが、やはり本物の迫力にはかなわないのだ。ただし、金はかかる。

 一例は1話。主人公で自衛隊の秘密諜報組織「別班」の乃木憂助(堺雅人)、警視庁公安部の野崎守(阿部寛)、医師の柚木薫(二階堂ふみ)、野崎のエージェントであるドラム(富栄ドラム)とバルカ警察が、夜間のカーチェイスを繰り広げた。仮にこんなシーンをCGでつくったら、必ずボロが出る。実写だから砂埃も舞いあがり、観る側は臨場感を味わえた。

 地味に見えてしまいがちな国内編にも金と手間が掛けられている。6話。乃木は別班の後輩・黒須駿(松坂桃李)と凄腕ハッカーのブルーウォーカーこと太田梨歩(飯沼愛)のいるマンションに向かうため、商店街を徒歩で進んだ。背後には尾行する警視庁公安部刑事の新庄浩太郎(竜星涼)がいた。

 商店街はまるで年末セールのような賑わいだった。だが、これは全てスタッフが作り出したもの。本物の人混みの中では撮影許可が下りない。そもそも通行人が一般市民だったら、堺と竜星に寄ってきてしまう。