第35回東京国際映画祭のレッドカーペットに登場した女優の広末涼子さん(2022年10月24日、写真:2022 TIFF/アフロ)

(河崎 環:コラムニスト)

ヒロスエ世代の覚醒

 ひさびさに見かけた40代の友人ビジネスマンが、しばらく見ないうちにスッキリ痩せてキレのいい笑顔で歩いてきた。

「あれ、お痩せになりました?」

「そうなんですよ、ヒロスエの件で、もしかして僕にもワンチャンあるんじゃないかって思ってダイエットしちゃって(笑)」

 女優の広末涼子さんと同い年、いわば直撃世代である彼。もちろんそれは賢く外交的な営業マン特有の社交トークで、現実的には仕事のストレスとか猛暑の夏痩せとか、人間ドックで何か引っかかって医者に「体重を落としましょう」と言われたとか、そういう背景だってあるのかもしれない。

 だけど、どうもこの「俺にもワンチャンあるんじゃないか」は、97%の軽口の底に、3%ほどの本気を薄く含むような響きを持っていた。