荷物が残されたままの部屋、残置物処理問題が深刻になっている(写真はイメージ)

 高齢化、核家族化、未婚者の増加といった時代背景もあり増え続ける単身高齢者だが、そんな一人暮らしの住民が去った後の住居にそのまま残された荷物、いわゆる「残置物」の撤去問題が深刻になっている。ルポライターの佐藤美由紀氏が、残置物撤去を行う清掃会社の現場作業を体験し、その実態をレポートする。(JBpress編集部)

増え続ける一人暮らしの高齢者

 昨年の初夏、80歳の伯父が脳梗塞で倒れた。幸い命に別状はなかったものの、身体に軽度の麻痺が残り、一人暮らしの自宅を引き払い親族宅へと身を寄せることになった。

 自宅は地方都市の一軒家。家を処分するにあたり、一連の手続きなどを妹である筆者の母が行うことになった。片付けがあまり得意ではなく、ひいき球団のグッズや切手などのコレクターでもあった伯父の家には、住み続けた年月とともに蓄えられた物品が所狭しと並んでいた。

 家を処分するにあたって、まずはこれらの品々をどうすればいいのか母は頭を抱えた。1日数時間ずつ、数回に分けて貴重品や着替え、本人お気に入りの収集品といった必要最低限のモノを運び出しはしたものの、一軒家を空にするのには到底及ばない。

 住人がいなくなった後の住居にそのまま残された荷物(残置物)の撤去問題は、今後ますます深刻になるのではないかと予想されている。高齢化、核家族化、未婚者の増加などを背景に増え続ける単身高齢者は、今後さらに増えると考えられているからだ。

 内閣府が発表している『令和5年版高齢社会白書』によれば、65歳以上で一人暮らしをしている人は男女ともに増加傾向にあり、昭和55年には65歳以上の男女それぞれの人口に占める割合は男性4.3%、女性11.2%だったが、令和2年には男性15.0%、女性22.1%まで増えているという。

 孤独死や残置物処理の懸念から、高齢者の入居申し込みを拒否する賃貸物件もあり、単身高齢者の住居確保は以前にも増して容易ではない。

 首都圏で特殊清掃や残置物撤去、遺品整理などを行う会社に勤務する高橋実さん(30代男性)に現状について話を聞こうと連絡したところ、実際の現場を体験させてもらうことになった。