カナダで発生した山火事の煙がマンハッタンも覆い尽くした(7月7日撮影、写真:ロイター/アフロ)

 日本で暮らしている限り、世界で億単位の人たちが飢餓に直面していることはなかなか実感できない。

 食料不足でお腹を空かせ、命の危険に直面している人たちが、国連が発表した最新の報告書では約7億3500万人もいるというのだ。

 日本の人口の約6倍もの人たちが飢えに苦しんでいる。いったいどういう状況なのか。

 7月12日に国連の5つの専門機関が共同で発表した報告書「世界の食料安全保障と栄養の現状(SOFI)」によると、気候変動をはじめ、ウクライナ戦争や地域紛争などが原因で、飢餓に直面している人が億単位にのぼる。

 そして、2019年以降だけでも新たに1億2200万人が飢餓に追い込まれているという。

 日本のメディアでは大きく報道されていないものの、極めて重要な問題である。

 日本は長らく飽食の時代と言われ続け、あり余る食品の選択に困るほどだが、世界では億単位の人たちが真逆の状況にある。

 同報告書によると、2022年の世界人口の29.6%(24億人)が中度・重度の食料不足に直面しているという。

 これがいまや「新常識」であることを認識しなくてはいけない。

 スイスのジュネーブにある国連機関である人権高等弁務官事務所のトップであるウォルカー・トゥルク氏は、同報告書について次のように述べている。

「私たちの環境は燃焼してしまっている。溶けてさえいる。枯渇し、乾燥してもいる」

「環境問題を担当する政策立案者が緊急に、かつ早急な対応を取らない限り、『人類はディストピア(暗黒世界)』に向かうことになるだろう」