阪急電鉄はかつて、あえて優先席を設けず「全席優先」の制度を導入。乗客の譲り合い精神に期待したが定着せず、2007年に優先席が復活した(兵庫・西宮市の阪急電鉄西宮車庫、写真:時事)

 常識とは、18歳までに身につけた偏見のコレクションのことである。

 アインシュタインが残したこの名言に従えば、常識はもっと疑っていいはずだ。私たちは、身の回りにあるルールを鵜呑みにしすぎてはいないだろうか。SNS上の、もっともそうな風説に流されすぎてはいないだろうか――。日常を「ちょっと疑ってみる」視点を、法哲学の世界から提供する。

(住吉雅美:青山学院大学法学部教授)

駐日大使の優先席利用に波紋

 私も疑問に思っていた、「優先席」。

 駐日ジョージア大使のティムラズ・レジャバさんのツイートが話題になっている。

 6月18日、彼は自分のアカウントに、電車に揺られながら都心に向かう姿を公開した。その画像は、ラフな格好で席に腰掛け、読書をしている姿だった。

 電車は空いているようだったが、彼が座っていたのは「優先席」だった。とはいえ彼の隣に座っている人はいなかった。優先席を必要とする人は側にいなかったのだろう。

◎2800万回以上表示されているティムラズ・レジャバ駐日ジョージア大使のツイート

 このツイートに対し、「どうして優先席に座っているんですか?」「優先席、座るなよ」などの批判的コメントが複数寄せられた。

 そういった批判に対し、レジャバさんは、「空いている優先席に座ることには問題ありません」「理屈のない不要な圧力は、生きづらい社会につながる。必要とする人が来た時に、率先して譲る精神が大事である」とコメントした。

 その後、ツイッターのコメント欄は、レジャバさんを支持するコメントで溢れることとなった。

「周辺に必要とされる方がいなければ座ってもいい席だと思います。そして座ったら必要とされる方がいないか気にかける、これでいいと思いますよ」といったコメントだ。

 レジャバさんのツイートがきっかけとなり、多くの人々が、改めて優先席について考えることとなった。賛否両論が出た。