前回は、「大ロット生産は本当に安くなるのか」というテーマを取り上げました。Jコスト論を使って大ロット生産と小ロット生産を比較し、「大ロット生産の方が見かけは安くなるが、在庫が増えてしまい、収益性は劣る」ということを説明しました。

 今回は同様の問題として、生産・販売・決済などを「月次」でやるべきか、それとも「週次」でやるべきかというテーマを取り上げたいと思います。

日本の管理サイクルのスピードは主要先進国の4分の1

 日本の社会は長らく、「お月様」の満ち欠けの周期に基づいた太陰暦を利用してきました。今でも月の最初の日を「月立ち(ついたち)」と言うのは、その名残りです。三重県の四日市市のように、毎月決められた日に行う「市」の名を都市の名としているところもあります。

 明治維新を機に、日本社会は西欧と同じ太陽暦を導入しましたが、太陰暦の影響は今でも根強く残っています。経済活動を見ても、今日に至るまで依然として「月次」が主体となっています。

 実際にほとんどの会社が月ごとの業績をまとめ、また、月の下旬に先月度の生産・原価・品質などを総括する会議を行って、翌月どうするかを決めています。なぜか今月のこと、今日のことはほったらかしとなっているようです。

 一方、世界に目を向けると、多くの国の工場では「月」よりも「週」を重視しています。さかのぼると旧約聖書に、「7日をもって週という単位に区切り、その内の1日を安息日とし神に感謝する」という言葉があります。これに端を発した戒律が全世界に広がり、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の信者に受け継がれ、守られていると聞きます。それらの信者の合計は約30億人に達します。

 ビジネスの世界で言えば、「P・D・C・A」の管理のサイクルが1週間単位で回っているということになります。それに対して日本のサイクルは1カ月(4週間)ということです。世界の主要国に比べて、日本の管理のサイクルのスピードは4分の1しかないのです。この違いは大変大きなものだと言えるでしょう。

ビッグ3よりも減産が遅れた日本メーカー

 もちろん日本においても、携帯電話や清涼飲料水の業界のように、素早い市場の動きに追従するために、週次計画で生産を行う業界は存在します。

 しかし、自動車業界はどうでしょうか。日本の自動車業界はもっぱら規模の拡大を追求して、世界市場を勝ち抜いてきました。「週次生産計画で世界の工場を戦略的に動かす」という発想はなかったのです。筆者には、それが現在の危機を生んでいる一因と思えてなりません。