(写真:ロイター/アフロ)

(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)

 10年前に習近平国家主席が誕生してから、中国はそれまでの食料政策を転換させ、大豆やトウモロコシを海外からの輸入に頼るようになった。いまでは世界最大の穀物輸入国だ。それがここへきて、ロシアによるウクライナ侵攻や米中対立の悪化により、輸入を減らし自給率を上げる政策に舵を切ったという。だが、そうなると中国による環境汚染、地球温暖化が深刻化する。その理由を考えてみたい。

11年連続で食料増産を実現

 まずは、習近平が食料政策を転換させた事情だ。「中国は95%の食料自給率を維持する」と世界に向けて約束したのが、それまでの中国の食料政策だった。

 きっかけは、1995年に中国を襲った凶作だった。そこで、鄧小平の改革開放政策によって世界の市場と関係を深め、外貨も蓄えていた中国は、コメ、小麦、トウモロコシなど1800万トンを輸入した。

 折しも、その前年にアメリカの思想家レスター・R・ブラウンが『だれが中国を養うのか?』と題する論文を発表したばかりだった。当時から中国の人口は12億人を超え、経済的な台頭による、将来の食料不足を叫び、世界中に懸念が広がっていた。

 それが現実のものとなりかねない。そこで大慌てしたのが、中国のあとを追う途上国だった。中国の輸入が増えると、国際価格が上昇して、途上国は食料が買えなくなる。世界の食料の安定供給を中国が破壊する。そういう批判の声があがった。