新潮社の会員制国際情報サイト「新潮社フォーサイト」から選りすぐりの記事をお届けします。
資本主義のグローバル化に反対するデモ(写真:ロイター/アフロ)

(文:矢嶋康次)

IMF(国際通貨基金)はグローバリゼーションがスローダウン(減速)する現在の状況を「スローバリゼーション」と形容する。ロシア・ウクライナ戦争や米中対立によって深まる世界の分断は、各国の成長戦略にも大きな影響を及ぼす。資源が乏しく人口も減る一方の日本が生き残るためには何が必要なのか。

分断が生み出す反グローバル化

 IMF(国際通貨基金)が4月に発表した世界経済見通しにおいて、世界のスローバリゼーションが長引いているとの指摘がなされた。スローバリゼーションは、グローバリゼーションのスローダウン(減速)を意味する造語であり、ロシアによるウクライナへの侵攻や米中対立を背景に世界の分断が加速し、グローバル化の流れが逆行し始めた現状を表している。

 グローバル化が深化してきたこれまでは、ヒトやモノやおカネが自由に行き来する流れが世界の経済成長に寄与してきた。スローバリゼーションが進めば、先進国だけでなく発展途上国や新興国も巻き込まれる。各国への直接投資や、技術移転も鈍っており、最もその影響を被るのは、途上国や新興国だと分析している。

 筆者なりの結論を先に述べると、スローバリゼーションは起きないほうがいい。しかし、分断はこれからも続き、日本はその影響を受ける。日本は、スローバリゼーションを前提に、成長するためのずる賢い戦略を着々と進めるしかないだろう。

日本・オランダによる半導体製造装置の規制

 2018年にドナルド・トランプ政権下で米国が導入した鉄鋼・アルミ関税は、同盟国の西側先進国も対象に含む措置であった。そこで導入された追加関税の多くは、いまでは議会の総意として継続されている。その目的は、次世代競争における優位性を確保すること。米国の規制は半導体や機微情報を含む、多くの領域に広がっている。安全保障を米国に頼る日本は、この米国の動きに受動的にならざるを得ない。

◎新潮社フォーサイトの関連記事
恐怖指数(VIX指数)に表れない米市場「超短期オプション拡大」と「泰然自若に似た判断停止」
ヒンドゥー至上主義が正当化されるインド・モディ政権の「民主主義観」
シリア「アラブ連盟復帰」も現実化させた「危うい中東新秩序」