(写真:ロイター/アフロ)

 米マイクロソフト傘下のビジネス向けSNS(交流サイト)を運営する米リンクトイン(LinkedIn)は、グローバル事業と中国戦略を見直すと発表した。これに伴い全従業員の3.6%にあたる716人を削減し、中国での求人・求職サービス「領英職場(InCareer)」を終了する。

 リンクトインのライアン・ロスランスキーCEO(最高経営責任者)は従業員宛ての書簡で「業務の進め方を再編成し、より機敏になり、成長に向けてチームを調整する」と述べた。中国事業では、プロダクトとエンジニアリングのチームを廃止し、企業、営業、マーケティング機能を縮小する。

 米ウォール・ストリート・ジャーナルによると、リンクトインは2014年に中国版SNSを始めた。だが、当局の規制強化により事業継続が困難と判断し21年にサービスを停止した。代わりに求人に特化したサービスを始めたが、今回再び事業停止に追い込まれた格好だ。領英職場は23年8月9日に終了する。ロスランスキーCEOは「競争激化と厳しいマクロ経済環境に直面した」と説明した。

アマゾン、メタ、グーグルも人員削減

 ロイター通信によると、2万人の従業員を抱えるリンクトインは22年、すべての四半期で売上高を伸ばした。だが、世界経済の見通し悪化を背景に、親会社のマイクロソフトなどのテクノロジー大手と同様にレイオフ(一時解雇)を進めている。

 米国を中心とするテクノロジー企業のリストラ情報を集計するLayoffs.fyiによると、世界ではこの半年間に、27万以上のテクノロジー関連職が削減された。例えば、米アマゾン・ドット・コムは23年1月までに計1万8000人のオフィス職従業員を削減した。同社は23年3月に9000人を追加削減すると発表した。

 米メタは23年3月に約1万人の従業員を削減すると発表。22年11月には当時の従業員の約13%に当たる1万1000人超のレイオフを明らかにしており、2回目の大規模解雇に着手した。米グーグルの持ち株会社である米アルファベットは23年1月、世界で約1万2000人を削減すると発表した。

中国から撤退する米テック大手

 一方、中国では近年、西側企業の事業活動が困難になっていると指摘されている。現地企業との競争激化、より厳しいデータ管理規制、厳格なインターネット検閲体制などが背景にあるという。例えば、グーグルは22年10月、中国本土の翻訳サービスから撤退した。このときグーグルは「利用が少ないため、中国本土でのグーグル翻訳を廃止した」と説明した。

 アマゾンは22年6月、中国国内での電子書籍サービス「Kindle(キンドル)」から撤退すると表明。同社はすでにKindle専用端末の中国小売業者向け出荷を停止している。中国での電子書籍配信事業「Kindle Store」は23年6月30日に停止する。利用者はその後も購入済み書籍をダウンロードできるが、24年6月30日以降はそれもできなくなる。アマゾンは19年に中国国内向けの「マーケットプレイス」事業からも撤退している。

 前述した通り、リンクトインは21年に中国版SNSを閉鎖した。民泊仲介大手の米エアビーアンドビーも22年7月に中国でのサービスを停止している。