鉄道への愛とは、地元への愛でもある

──鉄道という事業体は、沿線住民の間でも、その場所によって大きな温度差があり、それをまとめるのが難しいという話は、よく耳にします。

鳥塚氏:それでは鉄道を残すべきなのか、残すべきでないのか?

 それを聞いてまわると、誰もが「残すべきだ」と答えます。鉄道を残すべき理由を問うと、誰もが、「昔からあったから」と答える。「自分は昔、鉄道に乗って学校に通ったから」と答える人もいる。

 けれども今は乗っていない。それでは、あなたが鉄道で学校に通ったのはいつのことですか? と聞くと、それは数十年前だということになる(笑)。

──「鉄道を残せ論」は多分に心情的な部分があるように感じます。

鳥塚氏:何時になると汽車が走ってきて時間がわかった、というように、鉄道が風景の中の一部に溶け込んでいる。つまり、地域の人にとっての鉄道への愛とは、地元への愛でもあるわけです。

 ところが、この郷土愛に対してこの国は「お前ら鉄道に乗らないのに、鉄道を残せというのはエゴだ」と捉えて、鉄道を切り捨ててきたわけです。それを何十年も続けてきた。結果として、その地域はどうなったのかというと、ダメになったわけです。