22世紀まで高速道路の有料化が続くことに(写真:つのだよしお/アフロ)

(井元 康一郎:自動車ジャーナリスト)

「二分された世論」にニンマリの国交省と財務省

 政府は2月10日、高速道路の償還期限、すなわち「無料開放」の時期をこれまでの2065年から最大2115年まで延長するため、道路整備特別措置法など関連法改正案を閣議決定した。

 この方針について世論は「償還後に無料開放するという当初の約束を事実上反故にするのは許されない」という反発派と、「受益者負担は当然。改修費もかかるのだから受け入れるべき」という肯定派に二分されている。メディアはおおむね「無料化棚上げ」「半永久的な有料化」と報じている。

 国民のそんな議論を見て、国土交通省や財務省は今頃ニンマリとしていることだろう。“事実上”という部分についてはほとんど焦点が当たっていないからだ。

 2115年といえば22世紀。20世紀生まれの筆者もとっくにこの世を去っている。財務省や国土交通省の官僚ももちろんそうだ。そんなものは360度、どこから見ても「永久有料化」以外の何物でもない。

 にもかかわらず、なぜ2115年などという非現実的な期限を区切るのか。それは建設だけでなく維持や改修も含めた高速道路の費用を全額、通行料金でまかなう「償還主義」を堅持するためだ。

「期限を設けない本物の永久有料化をやってしまうと、公共の社会資本である道路の費用を一部の人だけが負担することの正当性が問われてしまう。他国のように高速道路にも一般財源を投入しろという話になるかもしれない。財務省も国交省もそれだけは絶対に避けたかったはず」(元東日本高速道路幹部)

 行政にとって幸いなのは、日本の国民は通行車両のみを受益者とすることに慣らされており、永久有料も償還期限を22世紀にするのも似たようなものだと認識していること。この償還期限見直しの法案が通れば、高速道路のあり方そのものを見直すべきという議論を22世紀まで、それこそ半永久的に封じることができるのだ。

 それをやるのは災害が多発して道路や鉄道などの維持費がかさんでいることが財政を圧迫しているとPRしやすく、かつ物価高を仕方がないものと受け入れる機運が醸成されている今はまたとない好機。それを逃さない目端の利きっぷりはさすが霞が関と感心するばかりである。