第3の人生を歩む道も

 そのような厳しい状況にあるダルマ駅だが、新たに「第3の人生」を歩み始めたものがある。

 現在JR宗谷本線に5つあるダルマ駅のうち4つは、非常に特徴のある外観に改装されている。色合いはさまざまなのだが、ガルバリウム鋼板で車体をぐるりと囲んで、近未来的な雰囲気を漂わせているのだ。リフォーム番組などでよく目にする金属サイディング張りというやつだ。

宗谷本線問寒別駅(2017年撮影、Mister0124, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)

 老朽化して見た目が劣化したダルマ駅でも、このように化粧直しすれば見栄えがよくなり、まだまだ利用できるということが、この例でよくわかる。

 JR吾妻線にある市城駅(いちしろ、群馬県中之条町)と郷原駅(ごうばら、群馬県東吾妻町)も、驚くべき変身を遂げたダルマ駅だ。次の写真を見れば一目瞭然、知らなければこれがダルマ駅だとは到底気づかない。

吾妻線郷原駅(2021年撮影、Mister0124, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)

 屋根瓦を乗っけられてしまえば、貨車の特徴である屋根部分の形状もわからなくなる。ただし、中に入って天井を見上げれば、その痕跡が残っているそうなので、一度訪れてみたい駅である。

「別の場所で余生を送る」というダルマ駅もある。

 JR根室本線には現在3つのダルマ駅があるが、もう一つ、花咲駅(北海道根室市)もそうだった。花咲ガニで知られる花咲港が近い駅だ。ただ、この駅は2016年3月26日に廃駅となった。

根室本線花咲駅跡(Mister0124, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)

 花咲駅が開業したのは1921年(大正10年)。すぐ北にある松浦牧場が用地を寄付したことで、この場所に駅が設置された。その後、1986年(昭和61年)に古い駅舎からダルマ駅に替わった。そして30年にわたり第2の人生を送った貨車は、廃駅後に撤去されたのだが、松浦牧場に引き取られたという。

 その様子を一目みられないかとネット上を探していたところ、おそらく公道から撮影したものと思われる写真が見つかった。木々の間から厩舎に寄り添うように置かれた貨車の車体が見える。その姿は、白黒の牛柄に美しく化粧直しされていた。

 駅が生まれることとなったゆかりの松浦牧場で、ゆっくりと余生を過ごしてほしいなと願わずにはいられない。

 貨車として長い間日本の物流を支え、第2の人生として30年以上にわたり駅舎としての務めを果たしたダルマ駅たち。解体されたものにはお疲れさまでしたと心から労いたい。一方改装されたダルマ駅には、その頑強さでもうしばらく駅舎としての役割を果たしてほしいと思う。いずれにしても、すべてのダルマ駅たちに、感謝の気持ちを伝えたい。