廃炉作業が進む福島第1原発(写真:AP/アフロ)

 ロシアによるウクライナ侵攻後、世界のエネルギー資源の地図は激変しており、日本を含め、資源に乏しい国々は新たな調達先の確保に必死になっている。侵攻前の2021年の財務省の貿易統計によれば、日本は原油の輸入の3.6%を、液化天然ガス(LNG)の輸入の8.8%を、石炭の輸入の11%をロシアに依存していた。

 このような状況下で「日本にはやはり原発が必要なのだ」と考える人は増えるだろう。原発の再稼働が進められ、最近では、小型原子炉の活用も提案されているが、日本は地震が頻発する災害の多い国だ。はたして原発は十分安全な選択なのだろうか。原発の運営と管理に関して調べ続けてきたジャーナリストは、原子力規制委員会の能力や姿勢に深い懐疑心を抱いている。『原発再稼働 葬られた過酷事故の教訓』 (集英社新書) を上梓した日野行介氏に話を聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)

──原子力規制委員会前委員長の更田豊志(ふけた・とよし)氏を中心に、2018年12月に六本木で行われた、通称「委員長レク」という秘密会議の録音の内容を本書で紹介されています。この録音の中で語られたことこそ、日野さんの一連の取材の重要なキッカケだったという印象を持ったのですが、委員長レクとは何なのか、この時の委員長レクでどんなことが語られ、何が問題だったのか、教えてください。

日野行介氏(以下、日野):専門的な知識がある、癒着のない、透明性を保つ運用に徹する規制当局という前提のもとに原子力規制委員会ができました。本来であれば、毎週水曜日の定例会ですべてを議論して、オープンに決めていくという約束になっている。しかし、規制委員会は『委員長レク』という秘密会の場を設けて事前に重要な決定を行い、その事実を隠していました。透明性など担保されていませんでした。

 しかも、この委員長レクの録音を聴くと、技術的なことを話し合っているのではなく、いかに運転を止めずに穏便に済ますか、自分たちの見落としを取り繕うか、といった話がされていた。規制委員会が今までアピールしてきたことがいかに嘘か、この委員長レクの録音が明らかにしたと思います。

──委員長レクのやり取りを読むと、前委員長の更田さんが、原発を止めないよう取り計らっているように見受けました。更田さんはなぜ原発を止めないようにする必要があると考えたのだと想像されますか?