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(勢古 浩爾:評論家、エッセイスト)

 いったいなにがどうなってるのか。岐阜市の70代の女性が、こういって身悶えるのだ。

「見たい! この年になっても見たい」

 なにをそんなに見たいのか。

 キムタクだ。

 11月6日に行われる「ぎふ信長まつり」の騎馬武者行列のために、キムタクこと木村拓哉が岐阜市にやって来るのである。いまこの時期、日本全国の市町村で一番の興奮のるつぼと化している町はまちがいなく岐阜市である。

観覧者に96万人が応募

 来年(2023年)1月に、織田信長と濃姫の物語を描いた映画『THE LEGEND&BUTTERFLY』が公開される。その縁で、信長役を演じた木村拓哉が「ぎふ信長まつり」に参加するということで、岐阜市は大変なことになっているのである。

 市が1万5000人定員の行列観覧者を募集したところ、全国から定員の64倍、岐阜市の人口40万人の2倍以上の96万人の応募が殺到したのである。同日開催されるトークイベントにも、定員800人のところに150倍の12万人から申し込みがあった。

 岐阜市は警察や鉄道会社と会議を開き、当日の警備計画や安全対策を決定した。まるで海外要人来日並みの大騒ぎである。非売品のポスターやパンフレットがインターネットで転売されることなどあたりまえ。市内の宿泊施設には若い女性からの問い合わせや予約が入っているというが、さぞや宿泊費もうなぎのぼりになっているのではないか。

 行列が通るコースにある商店街の店は、「特等席だ」と興奮する。岐阜県本巣市の40代の女性は「警備がどうなるのか、交通がスムーズにいくのか心配ですが、木村さんを一目見たいです」といい、衣料品店の女性(年齢不詳)は「見たいなと思いながら一応応募しました、必死こいて。当たってほしいです。助けてください」。なんだか市民全員が集団催眠にかかっているように必死なのだ(「木村拓哉さんが岐阜へ来る 沿道の店から宿泊施設まで早くもフィーバー」FNNプライムオンライン、2022年10月23日、https://www.fnn.jp/articles/-/433269)。

有名人に色めき立つ一般人の反応がどうにも

 日本には「有名人」という言葉がある(変な言葉なのだが、英語にもあるのかと思ったら、どうやら「セレブ」がそれに相当するらしい)。もちろん有名な人全般のことだが、ふつうは映画俳優、テレビタレント、芸能人を指す。端的には、映画に出てる人、テレビに出てる人のことである。