南三陸で隈氏が「さんさん商店街」の次に手掛けたのは、この「中橋」だ(設計はパシフィックコンサルタンツとのJV)。上弦材と下弦材でレンズのような形の歩行者専用橋。隈氏の設計と知らずに見ても、普通にかっこいい。

 以下はパシフィックコンサルタンツのサイト(https://www.pacific.co.jp/service/new126.html)から引用。

 東日本大震災の犠牲となられた方々への鎮魂の場として整備された復興祈念公園にアクセスする橋梁、それがこの「中橋」です。橋長80.6m、鋼管を用いた単純レンズトラス形式のこの橋は、X字の平面形状にダブルデッキ構造を採用した立体的な造形となっています。立体解析によって極限まで各部材の最小化を図り、緩やかな曲線を描く伸びやかな弦材と直線基調の部材がクロスする幾何学的な印象を持つ斜材のバランスが、この橋の繊細かつダイナミックな美しさを醸し出しています。また、床版や高欄支柱を兼用したWood Gateには地元産の杉材を用いていて、橋を利用する人に柔らかな印象を与えています。

上も下も通れる

 今日、名城氏に聞くまで知らなかったが、この橋は2021年に土木学会の田中賞を受賞したという。田中賞は、建築学会における作品賞のような賞。建築界では知る人ぞ知る橋だが、土木界では有名インフラなのだ。隈氏はもはや「建築界で評価されるために力を注ぐ」というマインドではないのかもしれない。

 道の駅や中橋を見た後は、「さんさん商店街」でゆっくり食事でもしながら、隈氏がこれを設計していたとき何を考えていたのかを想像してみてはどうだろう。

ホップ…
ステップ…
ジャンプ!

◎本稿は、建築ネットマガジン「BUNGA NET」に2022年9月22日に掲載された記事を再構成したものです。